ねこ無双

アデルの恋の物語のねこ無双のレビュー・感想・評価

アデルの恋の物語(1975年製作の映画)
4.0
不毛な愛情の記録。
ヴィクトル・ユゴーの次女アデルの日記、実話を基にした物語です。

アデルは愛する男(イギリス士官)を追いかけ、単身カナダへ渡る。
再会した男からもう愛していないとはっきり拒絶されたにも関わらず、男に執着し続けるアデル。
今でこそストーカーの話はたくさんあるけど、その着地点に愛の正体っていったいなんだろうと考えさせられてしまう。

過去の二人の蜜月も、生来のアデルの背景も詳しくは本編では描かれていません。
アデルがなぜこのような性質になったのかはわかりませんが、
ユゴーの娘であることを必死に隠していたのを見つけられると激しく怒りを表したり、
水に溺れる悪夢にうなされる描写が印象に残ります。(夢の中の女が、溺死したとされる姉なのか、アデルなのかがよくわからなかったのですが)

その追いかけれている男はいつも女を口説いてて、かなりチャラい。とにかくチャラい。
演じるブルース・ロビンソンはアラン・ドロン似の美貌を持つ青年。

そしてアデルを演じるイザベル・アジャーニの潤んだ瞳、揺らめく瞳のなんと美しいことか!
この頃、アジャーニはまだ10代。可憐な表情、そして肌は透き通るよう。ため息が出るような美しさ!
こんな美女をあっさり袖にするなんて信じられない!
でも、彼女の愛は余りに重すぎて、あんなぎんぎんな目で迫られたらやっぱり怖い…。
圧巻の演技はラストでしょう。
狂気というのは泣き叫べばいいというものではないと教えてくれる映画です。
ただ物語自体は淡々とした語り口で、アデルという人の妄執の記録を観ていたかのような気持ちに私はさせられた。

恋に恋するとはよく言ったもので、その人への愛なのか、愛に執着してるだけなのか境目がわからないような気もします。
彷徨うアデルの姿はまるで亡霊。
その瞳に映っているのはもはや存在しない、何者でもないアデルが作り出した男の姿です。

トリュフォー作品いくつか観た事あるんですが、実はあまりピンと来たことがなくて…でもこの作品はすごく好きな作品です。


🐾先日レビューした『血の本』、
新着だったはずなのにDisney+から忽然と消えてました。???
clipされた方、気をつけてください💦