LalaーMukuーMerry

はだかっ子のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

はだかっ子(1961年製作の映画)
4.5
これは素晴らしい映画だった。この前に見た「しとやかな獣」が心のきれいな人が一人も出てこないブラック・コメディだったのに対して(決して否定はしてません)、こちらは心の汚れた人が一人も出てこない、子どもたちの真っすぐな心に涙がとまらない名作だった(汚れちまった大人はちょっとだけ出てきますが)。
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Filmarksのコメント数も、見たいチェックもその数が信じられない程少ないのはなぜだろう? これはもっともっと見られるべき作品だと思います。
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戦争の傷跡がまだまだ身近だった1961年、東京近郊の米軍基地の近くに住む主人公の少年ゲン太(小学校6年生)。父親はインドネシアで戦死して、父親とは兄弟弟子だったという大工のおじさん夫婦の家の二階に、母親と同居させてもらっている。母はニコヨンと呼ばれた日雇い労働をしたり(日当240円は百円二個と十円四個だからニコヨン)、チンドン屋の三味線引きをして生計を立てている貧しい暮らし。ゲン太はガキ大将っぽい所はあるが、母親が大好きな真っすぐに育った少年だ。(ヨイトマケの唄を思い出した)
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小学校の担任のあき子先生(=有馬稲子)や、学校の友達、大人たちとの様々なエピソードがつづられて行くのだが、何気ない描写が今とは違う時代を的確に映し出していてとても興味深かった。
・犬は庭先の犬小屋で飼うもので、家の中には決して入れなかった。野良犬を捕まえる「犬取り」と呼ばれる人がいた
・登下校で交通量の多い広い道を渡らなければならない子供達。信号も横断歩道もなく、車のすき間を見つけて渡る様子は見ているこっちがハラハラする。
・東京周辺の小学校は、1951に所沢近郊にできたユネスコ村という遊園地(世界各国の特徴ある家がたくさんあるテーマパーク)に遠足や写生会で行くのが定番だった(ユネスコ村は1990年に閉園)
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私が素晴らしいと思ったのは、
・社会科でユネスコについて丁寧に教える授業風景。
それまでにも不戦条約はあったけれど戦争は起こってしまった。戦争をなくすためには不戦条約だけではダメで、人の心の中に平和の砦を築く必要がある。そのための組織がユネスコ。「人の心の中に平和の砦を築く」とはどういうことでしょう? と問いかけて子供たちにわかりやすく説明していくシーン。大人の私にも響いたワ。
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・学校での親子討論会(こんなのホントにやってたのかな?)
競輪(賭博)は良くないと大人たち(特に運営者である父兄会会長に)に迫る子供達。「競輪は経済面でいいこともあるんだよ」と言いくるめようとする会長に、ゲン太が食い下がる。「会長さんはいいこともあると言うけど、会長さんは弱い者いじめをしているじゃないか」。(ゲン太は貧しい友だちの家の生活が会長に踏みにじられたのを知っていた)
このあたり、カジノ施設導入に突然手を挙げたどこかの首長に怒った市民の抗議を思い出して、決して昔の話ではないなと・・・
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子供たちのセリフ回しは、芦田愛菜ちゃんはやっぱりうまいんだなと思ってしまうようなものだけれど、すぐにそんなことは気にならなくなります。今だからこそ見てほしいホントに良い作品でした。