Yoshishun

ブルーベルベットのYoshishunのレビュー・感想・評価

ブルーベルベット(1986年製作の映画)
3.5
デヴィッド・リンチ監督作の中では比較的わかり易くも、素直に面白かったと言い切れないもどかしさもあるエロティックサスペンス。前作『デューン 砂の惑星』で監督としての地位を著しく下げながらも、本作で完全復活と騒がれたそうな。

開始早々、庭で倒れる父。草原を駆けるような虫。そして、ジェフリーの拾った誰かの耳。事件の鍵を握るのは、クラブ歌手の女と彼女に付き纏うフランクという謎多き男。所狭しとシュールと不思議な世界観に溢れており、デヴィッド・リンチ監督らしさ全開である。何かが引き金となり不条理な世界に引きずり込まれる人々の姿と結末こそ、本作でリンチが伝えたかったメッセージそのものだろう。

ただデニス・ホッパー狂気の怪演や、終盤の怒涛の展開だけでは不完全燃焼気味であり、その分かり易さが仇となったのか、特にミステリーとしての面白さは全く無い。そもそもジェフリーが耳を拾ったあの瞬間からの物語は果たして現実だったのかも怪しいが、それよりも終盤まではあまり盛り上がらずに淡々とリンチの世界を彷徨い続けた感覚である。父が本作をかなり気に入っているのもありカルト的人気を得ているのも頷けるが、正直面白くはなかった。いつか他のリンチ映画を見漁った後にでも再見してみたい。
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