Fitzcarraldo

世界中がアイ・ラヴ・ユーのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

世界中がアイ・ラヴ・ユー(1996年製作の映画)
1.3
ハーベイ・ワインスタインのセクハラ暴露をきっかけに起きた#MeToo運動の煽りを受け、過去のスキャンダルが蒸し返された挙句にハリウッドから完全に干されてしまったウディ・アレン脚本・監督作。

本作が、スキャンダル以降にも関わらず平然と受け入れられてきたのに引いてしまう。

淀川長治
「近ごろ、恐竜に巨船に…とビックリだけの金もうけ主義にウンザリのアメリカ映画に、この久しぶり懐かしのダンス。そして、オール懐かしのメロディーのこのアメリカ映画。ここにミュージカルをお見せいたしますぞ-のはりきりを見せて、ウディが本物のアメリカをここに取り戻す。大げさでなく、近ごろ最高の大収穫」

と淀川長治の当時の評であるが…


ウディ・アレンブランドが確立さえしてしまえば、よもやその監督の地位を生かして好き勝手やれるのは容易なことだと思う。

もう本作では、自分の欲望を満たすためだけに作品を作ったようにしか見えない。


○オープニング
冒頭からベラベラとナレーションしてるのだが…彼女の姿が一向に画面に映らないので、一体誰の声なのか?話し手の立ち位置が非常に判別しにくい。親子関係、人物紹介を足早に説明しているのだが、その前にアナタは誰なの?どこのポジションなの?死んでしまって、あの世から天使の声として喋ってるようにも取れる。

こういうのは、主役というか語り手を先ずは説明した方がいいような気がする。こちらは出てくる演者の声の違いを聞き取れるほど、俳優の声を全て把握してるわけではない。

山瀬まみのような特徴的な声なら、特に説明しなくても聞き分けられるけど…

神の視点なら神の視点で、そういう説明が必要だし、人物であるなら先ずその人物を映して、話しているのは誰なのかを明確に示すべき。

矢継ぎ早に順不同でバァーっと説明されても分かりにくい。


Goldie Hawn演じるステフィと離婚した元夫ジョーをWoody Allen。ステフィの再婚相手ボブを演じるのはのはAlan Aldaなのだが…なぜどちらもジジイなのだ?2回連続年寄りと結婚するか?

しかも…離婚したジョーは、

ジョー
「ジゼルに捨てられたよ。この子だよ。僕の親友と駆け落ちした。美人だろ?もう身の破滅だ。自殺したい気分だよ。パリに戻ってエッフェル塔から飛び降りる。コンコルドで飛べは3時間早く死ねる。いや、時差を忘れてた」

クソジジイが若い女にフラれた話なんてクソどうでもいいし、そもそも現実のウディ・アレンは恋人の養女と二股してたことを考えると、あまりにも気持ち悪い。

これは物語だし、フィクションなはずなんだけど…少なからず地の部分は出てくるはずだし…これ地だろ?と思ってしまう。当然この頃から、そういう性癖があると思われる。

フラレて喚くジジイが情けない。
地でも、こんなことしてそうで…ムキになって、立ち回れば立ち回るほど、呆れてしまう。


○レストラン
Edward Norton演じるホールデンが、Drew Barrymore演じるスカイラーにサプライズのプロポーズをするのだが…

ハリー・ウィンストンで買った8000ドルの指輪をデザートのパフェに飾り付けして、スカイラーに出したら、何も気づかずに指輪ごと食べてしまう。

…さすがに無理だわ!
そんなわけねぇだろ?
騒ぎ立てる二人…うるせぇし…茶番だよ!


その場にいる人たちが歌って踊り出すミュージカル部分は…”La La Land“(2016)っぽくはある。ジャジーな歌と音楽が心地よい。


○ヴェニスのレストラン
ジョーと、Natasha Lyonne演じる娘のDJ。

同じホテルに泊まっているJulia Roberts演じるフォン夫婦が、他の席に座る。

フォンに惚れるジョー。
それを後押しする娘のDJ。

毎朝、彼女は走ってるから、パバも走れと助言。

娘なら…みっともないからやめなさい!と止めなくてはいけない立場だろ?…

ジョギングで偶然を装って、フォンにベラベラと話しかけるジョー。

ジョギング中にマジでこんなジジイいたら気持ち悪いんですけど…

どうしても現実の世界でミア・ファローと大学生の養女とを二股にしていたウディ・アレンの姿がダブリ…気持ち悪い。

さらに7歳の養女にも性的虐待をしたと言われているが…これの真偽は定かではないが…

本作を見てると、どうしても穿った見方をしてしまう。ウディ・アレンの書いた台詞や言動が気持ち悪いもん。これ確定だろ?!


○美術館
今度は美術の知識をひけらかして気を引けと娘。美術書を勉強して彼女に再アタック。

話しながら、何度も何度もフォンの両肩をタッチするジョー改めウディ・アレン。なんだソレ?!気持ち悪いよ!ボディタッチ多め。

しかもカーク・ダグラスが演じた『ゴッホ』しか知らないという男が、専門書を一夜漬けで読んだところで、専門の研究書を執筆しようとしてる人に何を語れるというのか…中身の空っぽな箱だとすぐ見抜けるだろ?

相手のカルチャーに合わせれば、落とせると思ってる非常に浅はかな恋愛観。これをコメディと思っても笑えるものではない。

『花束みたいな恋をした』(2021)の麦くんと、絹ちゃんのようになるよ。初めこそ同じカルチャー言語が通じるという喜びで、その言語を語り合えるという嬉しさで、急接近することはあるとは思うが、それと男女関係は全く別もの。


○パーティー会場の外
フォンの性感帯だという背筋に息を吹きかけるジョー。振り向くとキスをするフォン。

なんだこれ?

これは監督という権力を使って、好みの女優とキスをしたいがためのクソの所業にしか思えない。なんだこれ…マジで!

これよくジュリア・ロバーツもOKしたなぁ…
ちゃんと脚本読んで決めたのか?


○テラス
スカイラーと、Tim Roth演じる刑務所あがりのチャールズがキス。婚約してるのに普通にキスを受け入れるし、おかわりする淫売っぷりをみせるエロいドリュー・バリモア。

なんだこれ?初対面の人のこの男に惹かれる意味も理由も分からない。そんなもんいらないんだろうね…。とりあえずキスして…みたいなもん。


○カウンセリング室
フォン
「ついに最愛の人とめぐり逢えた気がするの。私の事をすべて理解してくれるわ」

いや、あなたの好みを話しただけで、あなたを理解したことにはならないだろ!
単に似たようなカルチャーだったってことに過ぎない。それを、理解と捉えるのは見当違いも甚だしい。


カメラがパンやティルトを多用して、非常に見にくい。それもスッスッとすごい速さでカメラを振る。舞台のよう。

こちらで何かが起こってると、もう一方でもまた何か起こってる。舞台なら照明のオンオフで見せたい方を切り替えられるが、本作では、カメラを振ることでそれをやるのだが…それが見にくい。ふつうにカットを割った方がいい!一連で舞台のようにやりたかったのだろうけど、カメラの振り方が強引だし、雑。


世界中で貧富の差が生まれ、持つものと持たざる者の二極化が激しく進んでしまった昨今…
この金持ち連中の舐めた態度は、癇に障る。
クリスマスはパリのリッツカールトン?
舐めんじゃねぇよ!


○川の見える美しい場所
踊る元妻ステフィとジョー。

ハーネスつけてんの?急に物凄い動きをするステフィ。浮いたように横移動したかと思うと高く跳ぶ。全く吊られてるのが見えない。
CGとは違う独特な動きは美しく素晴らしいのだが…

そして、またキスしてるよウディ・アレン…
この男…絶対やりたいだけだろ!!
ウディ・アレンの欲求解消オナニー映画。
本人だけは、そりゃ大満足だろう…
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