ろく

世界中がアイ・ラヴ・ユーのろくのレビュー・感想・評価

世界中がアイ・ラヴ・ユー(1996年製作の映画)
2.7
正直駄作だと思う。ウディ・アレンがこの映画で何を伝えたかったかはあまり響いてこなかった。

いや映画なんで「伝えなくても」いいじゃんって意見もあるだろう。たしかに。だったらそれは楽しくて楽しくて何もかも肯定したくなるような「高揚感」でもいいだろうし、見る者を引き込んでやまないフィルムの「緊張感」でもいいんだよ。でもこの映画にはそれもない。なんとなく撮られたなんとなくなフィルムにがっかりしてしまった。

とくにミュージカルのシーンはもっと僕らを惹きつけてほしいんだよ。ウディがミュージカル映画を撮りたい、それは解るんだけどその「画面」の貧弱さね。もともとウディ・アレンの映画って「画面」ではなくて「メッセージ」で動く映画だと思うんだ。だからなのか「画面」をぐいぐいと推してくる(中身からっぽでもいいんだ)スタンリー・ドーネンあたりのミュージカルと比べてしまい圧倒的に「貧弱」になってしまう。そこがどうも僕には残念だった。

またウディ得意のメッセージも散漫でどうもほかの彼の映画に比べ自分の立ち位置までが崩されていくような凶悪性も感じられなかった。そもそもウディの映画って凶悪だと思っているの。だって「お前もほんとはこんなもんだろ」って映画の中で語りかけてきて自分はどうなのって気になってしまう。あまつさえ自分の否定が映画を見ている内に起きてしまう。そんな足元をぐらぐらさせる映画群。でもこの映画にはそこが感じられない。僕は対岸の火事でいられてしまったんだ。宝石のシーンや強盗のシーンには処処笑ったんだけど、だから何って気になってしまった。全体としてC級なコメディだと思う。

でもまたほかのウディ作品はみますぜ。これだけでもう見ないというわけではないんで。
ろく

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