世界が美しく見えるのは、わたしたちがひとつずつ手放し望まなかった願いへの、代償なのだそうだ。だから世界はわたしを嫌う。わたしは物足りないとふてくされ、有り余っていると太々しく、どちらであっても満たされない上、叶ったものから手放したくなる。これは輪をかけて言っているわけでも、尾ひれを付けているわけでもない。わたしは多くを望み過ぎる。静かに肩を貸してくれる優しさが、震えるほど恐ろしい時があるように、人は壊れそうな時ほど、悲しみを笑顔で、喜びを涙で、頑として本音を明かそうとしない。見限られたはずのこのモノクロームの世界ですら、美しく愛おしいものに感じてしまうのは、やはり何かが終わろうとしているのだろう。
