タコ社長

パッチギ! LOVE&PEACEのタコ社長のレビュー・感想・評価

パッチギ! LOVE&PEACE(2007年製作の映画)
3.9
正直にいうと、井筒映画が結構好き。

前作パッチギ!、本作、あとガキ帝国?かな、わりと在日よりだと批判されることがあるようだけど…

何がいけないのか?

本作で、父世代が仲間とともに逃げるシーンや日本兵に暴力を振るわれるシーンを観ていて思ったのは、新鮮!ということだ。

つまり日本で製作される大半の戦争映画には、日本人が戦争というモノの中で、悪人であったと観せるシーンがないのだ。

たいていは、既に伏線として敵国を悪と設定しておき、そこで戦うという設定か、

或いは、善人だが戦争というどこからともなく降ってきた悪によって、仕方なく暴力的になるというパターン。

前者について考えるに、敵国=悪とするのは野蛮な刷り込みであるし、

後者などは、戦争がヒトラーで、登場人物がアイヒマンだと言っているような気がする。

この二つのパターンの何処に、御涙頂戴があろうか…

しかし戦争映画には必ず御涙万歳なシーンがある。観客は野蛮な設定にコロリとだまされ涙するのか?それともアイヒマンに共感し涙するのか?

いやそうではない、涙は共同体意識から生まれる。日本人は日本映画に日本という国を意識する。

共同体意識、民族意識と似てやしないか?

そう、本作の戦争シーンでの新鮮さは、在日コリアンの民族意識が、日本の映画に組み込まれている点に由来する。

全く当たり前すぎる分析だが、改めて、それの何処が悪いのか?

本作は在日コリアンをターゲットにした映画だろうか?

いや、本作は日本にいるあらゆる民族、多数派、少数派に向けて、共同体意識の平等さを訴えた映画なのだ。

日本の映画に在日コリアンの共同体意識が入っていようと、そのこと自体、フェアに捉えるべきなのだ。日本人の共同体意識も在日コリアンの共同体意識も、両方あっていいじゃないか。

そして共通するのが、他者への思いやり助け合いである。

そのことが充分に表現された映画だと思う。

余談
真面目なことを上で書いたが、本作を見るきっかけは、中村ゆりである。以前、平成細雪という、谷崎潤一郎の小説の設定を現代に転換したドラマで、三女を演じた中村ゆりが、まぁ良かったものだから、芋づる式に本作に行き着いた。