Omizu

旅する女/シャーリー・バレンタインのOmizuのレビュー・感想・評価

3.8
【第62回アカデミー賞 主演女優賞・歌曲賞ノミネート】
『007は二度死ぬ』などのルイス・ギルバート監督作品。英国アカデミー賞では主演女優賞(ポーリーン・コリンズ)を受賞、GGではコメディ部門作品賞にノミネート、アカデミー賞では主演女優賞と歌曲賞(The Girl Who Used to Be Me)にノミネートされた。

こういうのを今欲していた!ロンドンに暮らす主婦がギリシャで自分を見つめ直すというあらすじ。第三の壁を突破して語りかけてくる軽快なタッチが気持ちいい。

平凡な人生を送るシャーリー(それこそ壁に話しかけるような)を演じたポーリーン・コリンズが軽やかに演じていて魅力的。ちょうどこの間観た快作『バーナデット ママは行方不明』と似ているかも。

「自分がいなくなって本当に困る人はいるのか?」という人生の不満はすごく分かる。夫は自分を家政婦のように扱い、子どもたちは好き勝手に生きている。そんな自分を見つめるきっかけを探すようにシャーリーは旅に出る。

自分は母でも妻でもない、シャーリー・バレンタインだ!という確信を手にする・・・のか?というラストが興味深い。フェミニズム的要素もありつつ、それを客観視する視線もある。実に達観したつくりだ。

シャーリーの独り言、言動がとても面白くエネルギッシュ。たまたま逢った同級生と意気投合するくだりも面白かったな。

個人的にはすごく好きな作品になった。シャーリーという人をどう見るかで評価は変わってきそうだが、僕はシャーリーに今の自分を重ねて心底好きになった。他人にどう思われようと自分を大事にしたい。そう思える快作だった。
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