YYamada

サイコのYYamadaのレビュー・感想・評価

サイコ(1960年製作の映画)
3.9
【サスペンス映画のススメ】
〈ジャンル定義への当てはめ〉
 ○: 観客の緊張感を煽る
 ○: 超常現象なし

◆作品名:
サイコ (1960)
◆サスペンスの要素:
・誰がマリオンを殺害したのか?

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・不動産会社に勤める女性マリオンは恋人サムとの結婚を望んでいたが、サムは元妻への慰謝料の支払いに追われ再婚を渋っていた。そんな中、会社の金4万ドルを銀行へ運ぶことになった彼女は、出来心からその金を持ち逃げしてしまう。
・サムの元を目指して車を走らせるマリオンだったが、大雨で視界が悪くなり、偶然見つけた寂れた宿「ベイツ・モーテル」でひと晩を過ごすことに。そこで彼女は、宿を1人で切り盛りする青年ノーマンと出会うが…。

〈見処〉
①ヒッチコック監督による、
 サイコサスペンスの古典的名作。
・『サイコ』は、1960年に製作されたサイコスリラー。監督はアルフレッド・ヒッチコック、出演はアンソニー・パーキンス。
・恒例のヒッチコックのカメオ出演は、ジャネット・リー扮するマリオンが事務所に戻った際、その窓越しにウェスタンハットをかぶっている通行人として姿を見せている。
・映画史に残る衝撃のエンディング。「途中入場の禁止」「ストーリーの口外禁止」を観客に訴える録音メッセージが劇場で流したうえで、劇場公開がなされた。
・本作は後半部によるベイツ・モーテルの描写が有名であるが、前半部には、マリオンの横領をめぐる心理的葛藤が丁寧に描かれているサスペンス映画の傑作である。

②ヘイズコートと世界一有名な
 シャワーシーン
・映画史に残るサスペンス映画の傑作である本作であるが、製作前にヒッチコックが示したその過激な提案書を前に、製作会社のパラマウントは大反対。
・「キスは3秒まで」「男女同じベッドはNG」「銃と撃たれる人間を同じ画に入れてはいけない」…アメリカでは1968年まで「ヘイズ・コード」と呼ばれる厳しい自主規制条項が存在。パラマウント社は本作企画に示された性描写、暴力、女装が当時の厳しい検閲を乗り越えることが出来ないと考えていた。
・最終的にパラマウント社は、ヒッチコックのギャランティを公開後のインセンティブ制とすることで映画化を許可。(これによりヒッチコックに当初2700万円が予定されていたギャラは最終的には約16億円に拡大)
・ヒッチコックは「殺人の方法は、模倣願望を誘発しないやりかたで示さなければならない」条項に適合するため、本作をモノクロ撮影とし、緻密な絵コンテを事前用意してシャワーシーン撮影に臨んでいる。
・胃をナイフで刺しているように見せるショットでは、刃の先端をマリオンの体から引き離す撮影を逆再生させ、彼女が刺されているように演出。
・これらのすばやいカットやナイフのクローズアップなど断片的なシーンを組み合わせた撮影により「世界一有名なシャワーシーン」が製作されたが、最終的に52カットで構成されたわずか45秒のシーンに対し、ヒッチコックは78台のカメラを設置。また、撮影スケジュールの3分の1にあたる1週間を要している。
・なお、本作に対して「ヘイズ・コード」検疫が問題視したのは、映画史で初めてトイレが出てくるシーンだったそうだ。

③結び…本作の見処は?
◎: 今では当たり前の映画ジャンルとなったサイコホラーを確立させた歴史的名作。幼年期に本作を鑑賞した衝撃が忘れられない。
◎: ラストシーンのアンソニー・パーキンスの恍惚の表情に骸骨の顔が重ねる演出が恐怖を倍加させている。尻つぼみとならないヒッチコック唯一の作品かも?
▲: モノクロ映画でありながら、この歴史的作品にリマスター化を望みます。
YYamada

YYamada