kojikoji

サイコのkojikojiのレビュー・感想・評価

サイコ(1960年製作の映画)
3.7
1970年 アメリカ作品
ヒッチコック 47/53

流石に1960年代作品になると、つっこみたくなる部分はだいぶ少なくなっている。ただこの作品があまりに衝撃的で、話題に登ったものだから、この後、類似作品がたくさん作られ、バージョンアップ版をたくさん観ているせいか、今観ると新鮮味が薄らいでいる。

サイコとは精神、霊魂の意味から「精神異常」「多重人格」を表すようになっている。これもこの映画の賜物か。
サイコという題名からとんでもない殺人鬼が出てくるのだろうと思っていたが、序盤は、マリオン(ジャネット・リー)の情事から始まり、金を盗んだ彼女が、執拗にサングラスの警官に追われ、車の買い替えを疑われたり、モーテルでは金の隠し場所に逡巡したりして、本来の「サイコ」のイメージから遠いシーンが続く。

マリオンがこの後どんな風にして逃げるのか、彼女の犯罪の行方の方に心が奪われ始めた時、突然、惨殺されてしまう。
そう、「突然」なのだ。これには驚き、「あーそうだった」と本来の「サイコ」に戻る感じなのだ。
これは一種の「目眩し」にあったようなものだ。

1960年当時、「サイコ」も一般化してなかったから、この突然の殺人に観客は度肝を抜かれたろう。話題になるのもわかる。
残念ながら、今になれば、このシーンも可愛いもんだと思ってしまう。この手のシーンは嫌と言うほど見せられて、慣らされていることがよくわかる。

一番の見せ場がそう言うことだから、映画全体の評価は落ちてしまうものの、ストーリーは充分面白い。私は過去に一度観ているが、例によって忘れていて、「そうだった」の連続だった。
結果は、結構楽しんだ。

先に書いた突然を演出するための「目眩し」の手法は、ヒッチコックの作戦だったと本人が言っているから、私なんかは、まんまと彼の術中にハマったことになる。人間の心理をよく理解していると感心する。

因みにヒッチコック映画に下着姿の女性が出てくるのはこの映画だけだそうで、ジャネット・リーの情事のシーンは貴重なのだ。
これは確かめてみないといけない。

2023.04.03視聴143
kojikoji

kojikoji