ダンクシー

サイコのダンクシーのレビュー・感想・評価

サイコ(1960年製作の映画)
4.6
「待てよ 本当に母親を見たのか?」
「モーテルの裏の屋敷でね。でも無視されました」
「それが母親だったと言うのか?」
「そうに違いないわ 探偵も見ました。でも会わせてもらえなかったの」
「もしその女が母親なら…墓に眠っとるのは誰だ?」

初アルフレッド・ヒッチコック。サイコスリラーの金字塔であり、サイコスリラーはこの作品なしでは語れない。

有名なシャワーシーン、すごいすごいって言われまくってるけど、実際その通りで、今まで主役だと思っていた人間がいきなり殺されるんだよね。この衝撃の展開を当時やってみせたことがすごいのだ…!俺ですら、「え?もう死んじゃうの!?」ってなったし。公開当時、ストーリーが追えなくなってしまうため観客の途中入場が禁止されたとか。後半以降は、あれだけ温めていた"4万ドル"の存在は意味をなさなくなる。大金を盗んだ女の心理状態を描いたり、何度もアップして意味深に映していたのに、観客をまんまと騙してくるのである。いわばミスリードなのだ…!お金を盗んだ女の運命を描いた話かと思えば、テーマはそこではなかった。お金に恐怖があるのではなく、真の恐怖は人間にある。

観客の不安を煽るキャン・キャン・キャン・キャンというBGM。今でこそホラー映画でもテレビ番組でもお馴染みとなっているが、この作品から生まれたのだ。

ただでさえ緊張感がとてつもない雰囲気が漂っているのに、夜×車×雨のトリプルコンボ。不気味な夜に、不吉な予感を彷彿とさせる激しい雨の中、カチカチと動くワイパーと対向車のヘッドライトのチカチカ。もう観客の心理は虜になっている。引き込まれて離さない、そんなパワーがある。それだけでなく怪しさムンムンのモーテルと、その近くにあるさらに怪しさムンムンな屋敷が、恐怖と不安を掻き立てる。
さらに沼に車を沈めるシーンでは、車が一気に沈むのではなく、一度沈むのが止まってしまう。一気に沈めばいいものの、あえて止める。この安心出来なくさせる演出もお見事。

ヒッチコックはあえてモノクロで撮った。昼間車で逃走する場面も、白黒だと暗く感じさせる効果があるし、モーテルも屋敷も不気味さが増す。そして、殺害シーンや血の色の残酷さを軽減させたかったからだそう。


クソー、面白すぎたし完全にヒッチコックの術中にハマってしまったな〜!
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