あしからず

東京人間喜劇のあしからずのレビュー・感想・評価

東京人間喜劇(2008年製作の映画)
4.0
面白いしめちゃくちゃヒリヒリする。なんか心が傷だらけになった。
ロメールの喜劇と格言劇っぽいが所々に仕込まれた刃が深田晃司。監督は優しげな顔でこんなんばっか撮るから好きです。
洋画はある程度離れて観れるけど邦画は身近で生々しすぎてホラー度が高い。空虚な言葉の羅列と知ったかぶり。
人間の嘘と寂しさを剥き出しにした3部構成のオムニバスで、既視感やら自己投影やらで感情揺さぶられて辛。
特に素人カメラマン・ハルナの自己顕示欲の強さとプロの登場にワーッとなるが、すぐに個展を開く行動力だけはめちゃくちゃ尊敬する。その行動力があれば多分大丈夫。
CD、パンフレット、猫、結婚相手、右腕。みんな何かを探してる。片側には孤独、片側には幸福な結婚を切り取る2部の小窓も3部で破綻して、花嫁は4人に入れなかった。
空虚な言葉はどこまでも空虚で、心の傷が腕の傷になる。他人にとっては殺人事件だって昼ドラで、SNSニュースのコメント欄の残酷さを思い出す。
ただ鏡の右腕だけが生きてる証拠で美しくて。ラストの余韻がすばらしすぎた。
あしからず

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