Yuki2Invy

東京人間喜劇のYuki2Invyのレビュー・感想・評価

東京人間喜劇(2008年製作の映画)
3.8
ロメールの『喜劇と格言劇』の体裁を採っている、とも言えるが、これ喜劇なの?という感じでもある(=相当にシニカル)。三作目とか、かなりドラスティックにトラジディ(二作目もある意味凄く「居たたまれない」ケドも)。いちおう三作通して登場人物はそこはかとなくリンクしてゆく、というソコの「効かせ方」もまあまあ悪くない。そんなトコロも含めて、オムニバスではあるものの三作を通して「シニカルさ」を描き出すことが第一テーマと言うべき作品、かと思われる。



1.白猫
45分。ホントに偶然に知り合った二人の女が、夜中だってのにあっちゃこっちゃ慌ただしく歩き回る、という(ほぼ)一夜のみの物語。まあでも、こーいう経験て若かりしワタシにも無くはなかった、とゆーことで、私は男ですがそこは何となく共感出来ちゃったのです。要は、満たされない、とゆーことですよね(人恋しい、つーか)。ふとした何かが居なくなった白猫に見える、とゆーのは、これも私にも経験があるコトですわ(それは私にとっては、高校時代好きだったあのメガネのコ、ということになるのですが)。しっとりしっぽりとした風をカマす女性二人に比べ、男クズ二人は一転、何ともシニカルな滑稽さを作品にもたらしていたと感じました(=これはこれで好いアクセントだったかと)。繊細な短編ですが、纏まり・完成度はかなり良好ですね。

2.写真
34分。何ですかね、もはやコレは居心地の悪い、気まずい状況をひたすら描きたかった、というコトなのでしょーか?その意味では、終盤のその加速度はかなりキレッキレでしたね(特にあのデブゴン来襲あたりからは凄まじい)。ただ、ならばやはりオーラスにはもう少し演技的な工夫が在って然るべきだと思います。端的に、ちょっとアッサリ終わり過ぎ、とゆー様に感じるとゆーか(あーなることにはある種ものすごく説得力はあるのですケドね)。個人的にはどちらかというと苦手な作品です(そもそもですが私、あまりにシニカルな笑いって正直得意ではないのですよね)。

3.右腕
57分。これは素晴らしい。一見主人公が「右腕」という掛け替えのないものを失ったことがテーマな話に見えますが、実は主人公の絶望は更に深い部分に起因していた、とゆーのが終盤見事なまでに一瞬にして繋がります(思い返せば、確かに変な事故でしたよね)。とは言え一言、私にはあの奥さんは確かに子供は彼の子だと「信じて」いた様に見えましたよ。なら、それはそれでいーじゃないですか(彼女は彼女なりに彼と人生を共にしてゆこうという確たる意志を持っている、のですから)。一方で散りばめられるシニカルなコメディは、これも中々キレが好かったですね。どーでもいい脚フェチを延々語り込む医者、宗教紛いの同僚、何より『写真』で出てきたポンコツフォトグラファー(自称)の独り善がりな焦燥感が滑稽なコト!(『右腕』のココで効かせる為に『写真』を撮っておいた、という風にすら感じましたよ)。どーでもいい、とゆーのは、その愚かしさ故に笑いの対象となるのだ、と改めて実感しましたすね(それは乾いた「嘲笑」でしか無いのですケド)。
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