ろく

サウスパーク/無修正映画版のろくのレビュー・感想・評価

4.5
「なんてこった、ケニーが殺された」

これが黙殺されて「エヴエヴ」がアカデミーとは納得いきませんぜ。

もう大好きでテレビシリーズは毎回見ていた。これも20年前ほどに熱狂して観たよ。一見下品、下種、下郎のオンパレードだけど、よく見ると来たるべき「倫理」なんじゃないのって思った(久々の視聴)。まあそこまで言うのは言い過ぎって意見もあるけど、やはり「倫理」なんだよ。アゲアゲアゲ。

大事なのは寛容なの。「正義」の名前の元に他者を攻撃するのは「正しい」を信じているものたちの常套句じゃないのかしらん。「福田村」や「エヴエヴ」あるいは「ジョーカー」や「パラサイト」まで。基本、hotになってはいけないんだよ。そこにあるのは偉大なる錯誤と自己陶酔なんだから。「正しい」としてもそれはある種の判断留保が必要ではないのって最近思う。

ヒステリックに「正しい」を叫ぶのはうんざりだ。そして「正しい」の怖さはそこに反論を封じる力を持っている。「正しい」のだから「反論」なんてとんでもない。言っている人はただ「正しい」と思っているかもしれないけどそれは現代の権力構造じゃないのって考えてる。とくに「子供たちのため」と言う言説の怖さ。いいかい、「子供たちのため」は理屈として悪くはないんだ。そう考えるのもわかる。ただ、その言葉を言ってしまうことで何もかも「反論できない」、それが一番怖いんだよ。そしてそのことをこの映画は言っているんじゃないのって勝手に理解ですよ。

この映画はひたすら下品だ。でもその下品を全てなくす世界が出てきたら……全てがクリーンになる社会ってのは僕は怖いと思っている。伊藤計劃の「ハーモニー」ではないがその世界は「正しい」の?クリーンにするためには権力が働く。クリーンは本来「幸せ」のための手段だったはずなのに「目的」になってしまう。20世紀がマルクス主義と言う誤謬だとしたら21世紀は「クリーン」という誤謬かもしれない。そんなことまでこのバカ映画を見て考えてしまった。

ミュージカル仕立てのバカ映画だけど、僕はこの世界が「笑えなく」なることが十分怖いんだ。uncle fu○kerという馬鹿な歌を「バカだねえ」と言える世界が続くことを真に欲する。

※ただしフセインの扱いに関してはこれでいいのかという疑問も。これだけ最後「愛だろ、愛」なんだからサダムにも「愛」があってもいいのかとも思う。この映画の後で9.11テロが行われたがそれはサダムへの愛が足らなかったからではと(本当にいけない妄想だが)勝手に思う。穿った見方だろうか。
ろく

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