アキラナウェイ

イディオッツのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

イディオッツ(1998年製作の映画)
3.5
ラース・フォン・トリアー監督により、ドグマ95"という映画監督集団による実験的プロジェクトの第2弾作品として製作された作品。

ドグマ95とは…

デンマークに於ける映画運動。ドグマ95には「純潔の誓い」と呼ばれる、映画を製作する上で10個の重要なルールがある。それは全てロケのみの撮影とし、カメラは手持ち、人工的な照明は禁止、時間的、地理的な乖離は許されないといったもの。

人間の持つ根源的な欲望を赤裸々にドギツく描き出すラース・フォン・トリアーにどうしたって惹かれてしまう。

障害者のフリをして、人間の良心の裏の欺瞞をあざ笑う反社会的集団="イディオッツ"。孤独な女性カレンはひょんな事から、彼らと行動を共にするようになる。当初は戸惑っていた彼女も次第に彼らとの共同生活に心地良さを感じ始め—— 。

同監督の初期作だけあって洗練されておらず、とにかく何もかもをリアルに描き出す様はドキュメンタリーに似た風合い。

因みに性器も性行為もボカシなしで、本番行為まで映し出しているんだから、そりゃまぁ公開当時は問題作と騒ぎ立てられても不思議はない。知的障がい者を揶揄しているように捉えられかねない危うさも十分に兼ね備えている。

兎にも角にも
悪ふざけ
不謹慎
ふしだら
ナンセンスのオンパレード。

観ていて決して楽しいものではない。

彼らは所謂"普通の暮らし"を捨て、ただ自堕落に暮らしている。メンバーの叔父が所有する住居に入り浸り、酒を飲んだり、クスリに興じたり。たとえ普通の暮らしに戻っても、バカを演じ続けられるかを試し合ったりしている。

モラトリアムにしがみついているだけの、半端な大人達。

まぁ、一言で言えば、そのままバカなのだ。

でも彼らも本当は以前まで"まともな"大人だったのだ。

終盤、カレンに隠された秘密を知った時にはギョッとした。時に、人生に於いて耐え難い苦難に遭遇したら、人はバカになるしかないのかも。

これは観る人を選ぶだろう。
後味だって決して良くはない。
それでも僕は、このどうしようもない人間らしさをありのままカメラに収めようとするラース・フォン・トリアーが好きだから、これはこれで良しとしてしまう、不謹慎でバカな人間なんだと思う。