ユウサク

落穂拾いのユウサクのレビュー・感想・評価

落穂拾い(2000年製作の映画)
4.7
『アニエスによるヴァルダ』を見てからの観賞。デジタルカメラを手に入れ、死を意識し始めたヴァルダが映像に収めるのは「拾う」人たち。

一見造作もないカメラワークの一つひとつに強かな意図、意匠が感じられるのは流石の一言。手のクロースアップの向こう側からレンブラントの顔が現れた時、度肝を抜かれた。カメラを持ってない方の手でフレーム内フレームを操り、レンズの蓋を踊らせる。左からパンして行って拾ってきた二つの椅子を見せた後クッションをファサッと置く。針のない時計を自分に例えた後に窓の向こうをスーーッと横切る。あらゆる何気なさに感嘆。

また単純にドキュメンタリーとしても上質で、落ち穂拾いの絵からボランティアのフランス語教室(マリやセネガルからの移民を対象としている)にたどり着けるのはどんな小さな要素も見逃さないヴァルダの視野があってこそ。貧しいものが富めるもののおこぼれを拾うことすら制限しようとする現状への怒り。あのリンゴ農園のオッサンの「これは何の変哲もないリンゴ。容姿も知性もない女性」というセリフは未来永劫映像に残り続ける。ざまあみろ!
ラストの絵は保存状態的に外に出しても大丈夫なの?と思ったけどああいう形でヴァルダに映像に残してもらえたのなら絵も本望でしょう、というのは勝手過ぎる?
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