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散歩する霊柩車のほーりーのレビュー・感想・評価

散歩する霊柩車(1964年製作の映画)
3.6
『散歩する霊柩車』。

のちにあの『吸血鬼ゴケミドロ』を手掛ける佐藤肇監督だけあってコメディながら人間の欲が渦巻くどす黒いホラーテイストの作品だった。

実は昨日がたまたま33歳の誕生日で、ケーキを食べながら日本映画専門チャンネルで放映していた本作を観ていたのだが、誕生日にしてはトンデモナイ映画を観てしまった。(苦笑)

西村晃扮する風采の上がらないタクシー運転手が主人公で、年の離れたムチムチボディーの妻を演じるのは春川ますみである。

妻の浮気を知って激昂した西村が彼女の首を絞めるシーンから映画はスタートする。やがて場面は変わって、春川の入った棺桶を後ろに乗せて西村が霊柩車である人物たちのもとを訪れる。

一人は大会社の社長の曽我廼家明蝶、今一人は総合病院の医師の金子信雄。いずれも妻と生前交際していた男だった。

「彼女は私に浮気を知られたことを苦にして自殺した。彼女の遺書に浮気相手のイニシャルが書いてあった」とニセ遺書を見せびらかして、二人からそれぞれ口止め料をせしめようという魂胆だった。

その夜、一人が西村の家を訪れるが事態は思わぬ方向へ急展開する。

というストーリー。

西村&金子のクレイジー演技を拝められる怪作。霊柩車の運転手役の渥美清もどっか薄気味悪い人物で、最後の最後で本性を現すのが怖かった。

ただ病院の死体置き場《モルグ》のくだりが少々冗長だったり(そもそも何故あえてあの場所に死体を移動したのか)と気になる場面もあった。

色々と粗はあるがストーリーの整合性については二の次で、あとは個性派役者たちが見せる人間の強欲さを思う存分楽しんでください!というような作品だった。

なお本作には主題歌があって、西村が作曲(!)した歌を当人が劇中で歌っているが、これが美声で意外とイケる。レコード売れたのかしら??

■映画 DATA==========================
監督:佐藤肇
脚本:松木ひろし/藤田傳
企画:秋田亨
音楽:菊池俊輔
撮影:西川庄衛
公開:1964年10月3日(日)
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