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修羅の伝説のfallenleavesのレビュー・感想・評価

修羅の伝説(1992年製作の映画)
3.5
小林旭の明日なき暴走が描き出されます。たくさんのいい顔の役者が出ていますが、「死に様」の演技に役者の技量が凝縮されています。流石のトラディショナルな「東映死に」を見せてくれる室田日出男、やたら長い尺でキメキメに死んでいく清水健太郎、峻烈な最期の白竜、便所でヘッドロックされてあっさり死亡の綿引勝彦、バスルームに沈められ長時間バタバタし続ける西岡徳馬など、十人十色です。「旧世代やくざ」小林旭、室田日出男、岩尾正隆らと「新世代やくざ(≒Vシネマ)」陣内孝則、ビートたけし、白竜、清水健太郎らがあいまみえるのは刺激的であります。やくざ映画が新しいフェイズに入ったころの過渡期の一作と言えるでしょう。ただ、豪華絢爛なだけに、その壮大さが災いして従来の東映やくざ映画にあったスピーディーでコンパクトでマッシヴなエネルギーが失われてしまった感は否めません。良い役者が出ているのだからもっとガツンときてもおかしくないのにな……という感じもありました。あとは序盤はあんまり目立たない旭の愛人役ルビー・モレノが後半とても活き活きとしてきて、鮮烈な結末を迎えるのも良かったです。ルビー・モレノが良かっただけに、旭の妻役秋野暢子は少し蛇足の印象を受けてしまいました。旭の子ども役がしきりに「ディズニーランドにつれていって」と手紙を書くのも要らなかったような気がします。それにしても旭が強すぎやしませんか。小林旭が、偉い奴らはボッコボコにするのに、若い衆にはやたら甘く、優しいというのは『仁義なき戦い』で偉い奴らの思惑のもと、やたらと犬死にしていった若い衆へのオマージュではないか、と連想してしまいました。
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