ガリガリ亭カリカリ

パラノーマル・アクティビティのガリガリ亭カリカリのレビュー・感想・評価

1.5
日本人は、この映画が想定する観客からは除外されているような気がする。

たとえば『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』は、世界共通で認識できる「森」をロケーションに設定しているのがうまかったが(『ジョーズ』の海と同じ理屈で、世界中のどの海も怖くなる)、日本家屋独特の不気味さなんか微塵もない海外の家が舞台なので、まず場所が怖くない。限定されすぎているからだ。彼らにとっては危険な空間だったのかもしれないが、観客にとっては全く危険な空間として成立していない。
また、『ブレア〜』では魔女そのものを映さないことが怖かったが、こちらはモロに悪魔でござんすな足跡を表象してしまっていて、じゃあもうフェイクドキュメンタリーじゃなくていいんじゃね?とも感じる。

カメラを設置する位置も、明らかに何かが映る前提の位置に置かれていて段取りすぎて怖くない。起きる現象もフーンってレベルの積み重ねで、ラストのベロベロバア的な表現も下品で仕方ない。早送り演出にしたって、誰のどういった意図で早送りにしてんの?って感じで、この映像を撮った本人たちではない、第三者の謎の意図がリアリティに支障をもたらしている。

構成も退屈だし、芝居もグダグダしているし、ホラー表現も凡庸以下なレベルで、何一つ怖くも面白くもない。
何より、最も大切である恐怖に直面したときのリアクションというものを全く演出できていなくて、ほとんどジャンルへの蔑みというか冒涜にすら感じる。

唯一、つまらない本編が終了した後、どうでもいいテロップが表示されて、その後、全く何も起こらない真っ暗闇の画面だけが1分間ほど映し出されるが、あの時間はかなり怖かった。劇場で観たとき、脱力し切っていた場内が、あの1分間だけザワザワとどよめいたのはいい思い出。