映画のカットから滲み出る主要キャラクターの葛藤が如何なく映し出され、そこに映像美が追求され、芸術作品として極めて高い作品である。
いくつかのシーンやカットから香港のウォン・カーワイが影響を受けたであろう事は一目瞭然。
主人公マルチェロを演じたジャン=ルイ・トランティニャン、そしてアンナを演じたドミニク・サンダが極めて高い演技力を発揮している。
この二人の葛藤が作品の後半を引っ張っていく。
そして、中盤でのちょっとした幸福感がこの主人公たちの悲哀をさらに引き出しているのではないだろうか。ジュリアとアンナのダンスのシーンはこの作品の名シーンでもあるように思う。
そして、終盤でマルチェロが引きずって来た闇が一気に解き放たれるが、すでに遅し。こう言ったところに人生の皮肉が巧みに表現されているところがベルトルリッチ監督の手腕のように感じる。