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暗殺の森のskipのレビュー・感想・評価

暗殺の森(1970年製作の映画)
4.1
子供の頃、襲われそうになり相手を銃殺してしまったというトラウマを持ち、普通になりたいという思いからファシズムに傾倒していく主人公マルチェロ。
普通って何なのか。2023年日本の若者も抱えているような普遍的な悩みだけれど、多数派に合わせていきたいだけなのに、ファシズムに繋がっていく時代。ラストシーンでのある人物との再会は、悲劇でしかない。

ストーリーもさることながら、映像美に惹きつけられた。
教授とマルチェロが対峙する教授の部屋でのシーンは、光と影の描写に見惚れてしまって、初見では会話が入ってこないほどだった。改めて見返すと、マルチェロと教授の会話と、光と影の描写が見事にリンクして、何度見ても飽きない。
また、夜明け前の幻想的な青い画面から、夜明けと共に視界が開けるように、雪が積もる森の中の白黒くっきりとした情景に変わる、その空気感の変化も面白く感じた。
他にも、白い壁の精神病院、妻と教授夫人のタンゴダンスの妖艶さ、枯葉舞う庭…まるで絵画を観るように、どのシーンを切り取っても素晴らしかった。何度でも観てうっとりしたい。
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