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暗殺の森のtomひでのレビュー・感想・評価

暗殺の森(1970年製作の映画)
4.0
午前十時の映画祭でベルナルドベルトルッチの「暗殺の森」が4Kリマスター版で観られるというので劇場へ。「暗殺の森」を観るのは今回で3回目、劇場で観るのは初めて。

今回は映画評論家の町山智弘さんの解説映像が本編の前後に入る。分かりにくい映画だが初めて観る人は町山さんの本編前の解説でとても入りやすくなっていると思う。映画の舞台となる時代背景をそれなりに理解していないと意味不明になりやすいと思うので町山さんの解説はとても良かった。

この映画の最大の魅力は撮影。カメラが本当に素晴らしい。今や大巨匠となったヴィットリオストラーロ三十代の作品。画面レイアウト、人物配置や光の使い方がとてもスタイリッシュで画を見ているだけで楽しくなる。

映画前半、ブラインドを使って画面全体がストライプ模様になる画づくり、実際にはあり得ないが、外光が動き出しそのストライプの影の動きとキスをする2人の気持ちの高ぶりがシンクロする画づくりとか本当に巧い。

普通であろうとした主人公(ファシストが当時の体制でありそれが普通であった)がタンゴダンスの群衆に取り囲まれるシーン、普通の人々と普通であろうとした主人公の距離感、隔たりがダンスの俯瞰ワンカットで表現される巧さ。

そして真っ白な暗殺の森へ入っていく怖さ。雪降る静かな白い森、美しい木漏れ日、漆黒の車と男達、血の赤。そのコントラスト。このシーンのカットの積み重ね、その緊張感が凄まじい。美しさと怖さ…。

53年前の公開当時に観た人の衝撃が想像できる。特に同業の映画監督にはめちゃくちゃ影響与えてそう。コーエン兄弟は間違いなく影響受けてると思う(笑)
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