ツクヨミ

暗殺の森のツクヨミのレビュー・感想・評価

暗殺の森(1970年製作の映画)
2.9
ヴィットリオストラーロによる名景と時代潮流に流される男。
ベルナルド・ベルトルッチ監督作品。午前十時の映画祭にて鑑賞、密かに楽しみにしてたベルトルッチ代表作らしい本作を見に行ってみた。
まず本作はやはりなんといっても撮影監督ヴィットリオストラーロのショット力と移動撮影が美しすぎた、固定ショットの構図美はもちろんのこと、溝口健二作品のような縦横無尽カメラワーク特にズームアウトする時にハッとなる画面制圧力にウットリしてしまう。正直"ラストエンペラー"を見た時はそこまで感じなかった名景の嵐に呑まれるような映像体験を感じた。
ストーリーに関してはファシズムが始まる頃のイタリアを舞台にし、ファシスト党に入った男が任務を遂行していくさながらある種のスパイ映画ともとれる内容になっている。そんな内容を前半は時系列を多様に交差させ描き出すのがかなり初見殺し、気が遠くなりそうな感じなんか80年代ゴダールのテイストすら感じるぐらいだ。だがそんな意味不明な感じも後半になるにつれフランス.パリでの任務にフォーカスすることでやっと落ち着きを見せ始める。
後半は本当に官能的な美が散見され、ターゲットとなる教授の奥さんがまあなかなかに魅力的でちょっとした不倫関係になる日々がかなりロマンティック。舞踏会のシークエンスでは主人公の妻と教授の妻による官能極まる眼福なダンスに釘付けになってしまう。
まあ全体的な雰囲気というか結びはファシズムという時代潮流に流され消えていく儚い男の物語という点は"ラストエンペラー"に通ずる要素かと。いろいろと特筆すべき素晴らしさは感じたが結局個人的にはそこまで刺さらなかったと言うべきか。
ツクヨミ

ツクヨミ