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霧の波止場の一人旅のレビュー・感想・評価

霧の波止場(1938年製作の映画)
5.0
マルセル・カルネ監督作。

フランスの港町を舞台に、脱走兵の男と若い女の出逢いと別れを描いたドラマ。

名匠:マルセル・カルネが戦前に撮った骨太な人間ドラマで、アキ・カウリスマキの『ル・アーヴルの靴みがき』(11)でも舞台となったフランス北西部の港町ル・アーヴルにおける訳あり男女の邂逅と運命を描いています。

外国への船出のために霧深い港町ル・アーヴルにやってきた植民地部隊の脱走兵:ジャン(&懐いてきた野良犬)と、彼が酒場で出逢った若く美しい女性:ネリーの恋の顛末を、ネリーを愛する義父の秘かな目論見や、義父がトラブルを抱えている現地のヤクザ者との争いを絡めながら描いています。

ル・アーヴルに立ち込めた霧の光景がモノクロの映像によく映えていますし、モーリス・ジョーベールによる抒情的な音楽が刹那的な男女の恋を哀しく盛り上げています。

そして、主演のジャン・ギャバン(撮影時34歳)と相手役のミシェル・モルガン(撮影時18歳)という歳の差16歳のコンビが恋と人生の狭間で揺れる男女を物憂げに演じていて、当時既にスターであったジャン・ギャバンに引けを取らない力演を披露したミシェル・モルガンは本作が出世作となりました。さらに、ネリーの義父役で出演した怪優:ミシェル・シモンの存在に注目で、物語の進展と共に豹変していくユニークな役柄は正に適役と言えます。
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