うめ

カンバセーション…盗聴…のうめのレビュー・感想・評価

カンバセーション…盗聴…(1973年製作の映画)
3.9
 フランシス・フォード・コッポラ監督作品と言うと壮大で重々しく、悪く言うと冗長な作品が浮かぶ。だが、今作は彼の作品にも拘わらず、非常にシンプル。だが、彼らしさがひしひしと伝わる良作だ。

 依頼を受け盗聴をする仕事をしているハリーが主人公。寡黙で孤独な彼が、とあるカップルの会話を盗聴したことから、恐怖に襲われていくスリラー。こう書くと、なんてことない話に思えるが、盗聴している人間が自分も盗聴されているのではないか、狙われているのではないかと不安にかられる姿は、現代にも通ずる。また、その恐怖の描き方が上手い。ほとんど音楽を使わず、ゆっくりとしたカメラワークでハリーに迫る。音楽で唯一使われてるピアノ曲は、悲しげであると共に不安定な印象を与え、ハリーの心理的描写を見事に行っている。

 こうしたシンプルな演出のおかげか、俳優たちの演技が光る。特にジーン・ハックマン。荒くれ者や短気な奴を演じている印象の強い彼だが、今作では抑えた演技で盗聴屋の孤独を表現している。その相棒を演じたジョン・カザールも、相変わらず印象に残る演技を見せている。

 ゴッドファーザーシリーズや地獄の黙示録に劣らない良作。観て損はない。
 
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