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カンバセーション…盗聴…のIMAOのレビュー・感想・評価

カンバセーション…盗聴…(1973年製作の映画)
5.0
フランシス・フォード・コッポラ、1973年の作品。事あるごとに観直すが、その度に発見がある。
ある盗聴屋がいる。世間から見れば裏の商売だが、その道ではベテランで名が通っている。この男が何者であるのか?どういうバックグラウンドがあるのか?それは判らない。けれども出だし30分くらいで、その男の哀しみや孤独といったモノがヒシヒシと伝わってくる。例えばこういうシーンがある。男の部屋は三つも鍵がかかっている。でもある日ドアを空けると誕生日のプレゼントが置いてある。どうやら下の住人(管理人らしい)が合鍵を使って置いていってくれたらしい。男はその下の住人に電話をかけて礼を言う。だが、続いてこうも言うのだ。「どうやってこの部屋に入ったんだ?もう二度と俺の部屋に入るな。」男は誰も信用していないし、天涯孤独だ。それが自分で望んだからそうなったのか?それとも仕事柄そうなってしまったのかは判らない。多分その両方なのだろう。でもコッポラはこのジーン・ハックマン演ずる男の孤独さを本当に巧く表現する。それが彼の最大の武器でもあり、最大の弱みでもあるから。この映画はコッポラ流ハード・ボイルドだ。
「音」という本来目に見えない感覚を「視覚的」に表現する腕前はやはり見事。ジャズをメインとした音楽の使い方も一歩間違うとスカしてしまうのだが、絶妙なバランス。テリー・ガー、ハリソン・フォードなど70年代おなじみのスター達が脇役で登場していて懐かしい。
コッポラといえば『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』という人も多いだろうし、時期的には『コッドファーザー』の後の作品となるが、この『カンバセーション…盗聴…』を撮るために『ゴッドファーザー』を引き受けたという逸話が残っている。それほどまでにコッポラにとっても、思い入れのある作品なのかもしれない。
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