松井の天井直撃ホームラン

流れるの松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

流れる(1956年製作の映画)
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↓のレビューは。今はもうなくなってしまった映画レビューサイトに、鑑賞直後に投稿したレビューを。こちらのサイトに移行する際に、以前のアカウントにて投稿したレビューになります。

☆☆☆☆★

女優達の演技合戦を観る喜びに、成瀬巳喜男の演出力を堪能する幸福感。
いや〜凄い!この奇跡的な女優陣のアンサンブル。ハチャメチャに面白かったなあ〜。

芸は一流。人を育てるのは二流。
傾いた置屋ではあっても、芸者としての誇りを持って意地と見栄で切り盛りする女将役の山田五十鈴。

・その娘で勝ち気な高峰秀子。

・女将の妹で、のんべんだらりの中北千枝子。

・現代的芸者でおきゃんな岡田茉莉子。

・女将の姉で超ケチケチな賀原夏子。

・何かと世話を焼く栗島すみ子。

・中でも素晴らしいのが、噂好きでついつい羽目を外してしまう。ダウンタウンの浜田…じゃなくて杉村春子が抜群に素晴らしい。

そして何と言っても謎多き女中役で、みんなの心の寄りどころになる田中絹代の素晴らしさ…と。
女優達の演技合戦を観る喜びに、成瀬巳喜男の演出力を堪能する幸福感。

表と裏を使い分け、男を喜ばせる女特有な職業の芸者の世界。

しかし現実では男に頼らざるを得ないその矛盾。
内容的に男優陣にはなかなか出番が無いのですが、その中では宮口精二の《鋸山》のキャラクターが面白い。
他では仲谷昇の若さにちょっと驚く。

日本映画の中に《芸道物》とゆうジャンルがもし存在するのなら、間違い無く上位に来る傑作ですね。

2008年 9月27日 新・文芸坐