流れるのハレンチ学園在学生のネタバレレビュー・内容・結末

時と大川は流れる。成瀬巳喜男の演出が冴えに冴え渡る傑作。女優陣の競演、芸のぶつかり合いが凄まじいばかりで何度見ても震える。山田五十鈴高峰秀子杉村春子岡田茉莉子中北千枝子栗島すみ子そして田中絹代。山田五十鈴の芸者置き屋の主人が派遣会社から寄越された女中役の田中絹代に「ねぇ、梨花さんて呼びづらいからお春さんにするわ」と名前を勝手に変えてしまうシーンがあるがあれは幸田文の原作にあるのだろうか。開巻まもなく繰り出すこのセリフからもう本作がただごとではすまされないことを確信した。衰退する柳橋の芸者街にあって、栗島すみ子に店を小料理屋に変えられてしまうことも知らずに三味線を弾く山田五十鈴と杉村春子。そこに玄人の商売と決別するかのように高峰秀子の操るミシンの音がぶつかり合う。見事なラストシーンでただただ陶然とする。