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アンナ・マグダレーナ・バッハの日記のokawaraのレビュー・感想・評価

3.9
画面に大写しにされる楽譜とそれに重なる音楽との同一性は、音楽を解さない私には理解の及ばぬところではあるが、少なくとも厳密な同期性がないことは確かであろうと思う。この映画では、楽譜をめくる身振りや、適切に演奏者ないしは歌い手がフレームに収まっていくこと、すなわち身体性が伴う光景においてのみ、音楽の真正性が明らかになるのだから、雲の流れる空がそこに感傷なりを呼び起こすことはない。裏を返せばこの映画は、映画一般における背景音楽の無効性を顕にする試みだったように思える。
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