宇尾地米人

ジャッジメント・ナイトの宇尾地米人のレビュー・感想・評価

ジャッジメント・ナイト(1993年製作の映画)
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 Judgement Night 審判の夜。ということでこれは夜の映画。夜の静けさ、夜の緊張感、そういうスリルがじわじわ迫ってくるサスペンス。現代のアメリカの暗部というか、ギャングに狙われる怖さを感じさせる一作です。兄弟と友人で連れ立ってボクシング観戦に出向く途中、スラム街に入り込み、大怪我した少年がギャングに撃ち殺されるところを目撃してしまった。ギャングたちから口封じに追われる。逃げろ逃げろと、静かな夜の街を隠れながら駆けまわる。ギャングたちが銃を持って殺すぞ殺すぞと近寄って来る。逃げられるか生きて帰れるか。そういう死の恐怖、無惨に殺される恐怖がどんどん高まってくるような若者映画。

 これはジョン・ブアマン監督『脱出』のコンクリート版。気軽にお出かけしたつもりが、思わぬ事態になって、死ぬかもしれない恐怖に震える。逃げるも逃げるも、闘わなければ助からないという葛藤。このあたりが特に通じるものがありますね。ですが、この映画の主役は若者たちです。兄弟と友人たちということで、怖さのなかに兄弟愛や友情の亀裂、団結が描かれるところもスリルと面白さがあります。どことなくウォルター・ヒルみたいな感覚もあるなぁと思ったら、プロデューサーのジーン・レヴィは『ストリート・オブ・ファイヤー』を手掛けた人でした。

 監督も撮影も、『プレデター2』のスタッフがあたっています。勿論この映画に異星人は出てきませんが、アパートから外に出てはしごを渡っていくような場面をみると、なるほど夜の住宅地をサスペンスいっぱいに撮ってるなぁと思いました。監督のスティーヴン・ホプキンスはジャマイカ生まれで、イギリスとオーストラリアで育ったそうです。CMやミュージック・ビデオの演出から映画界入りしています。だからか独特の感覚を備えています。映像の印象が、どこかコッテリした熱気を帯びているような、独特のタッチを含んでいます。SFやアクション、ホラーが得意の個性ある監督です。この次に手掛けたのが『ブローン・アウェイ/復讐の序曲』、『ゴースト&ダークネス』なので、やっぱり男っ気がギラギラした演出が得意ですね。
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