堊

怪人マブゼ博士/マブゼ博士の遺言の堊のレビュー・感想・評価

4.4
いろんなところで引用されているが、マブゼ対面シーンで部屋に入る→カーテンから透けている男の姿→主人公たちと来て、同じように切返しにしたくなるところをカーテンの向こう側から映し、カーテンに銃声とともに穴が開いて光が漏れていき、それをめくって驚く主人公の姿、そして現れるマブゼ装置、となっているのがほんとうに素晴らしい。どうしてここのシークエンスはこんなに何度も見たくなるんだろうか。正面からマブゼと向き合い霊体が力を発動するシーンなんてめちゃくちゃおもしろい頃の黒沢清だったし、ゴダール大好きなラストの爆走活劇は『スピオーネ』を撮った作家であることを思い出させる。マブゼが発せられるすべての音がインダストリアルノイズしていてとにかくカッコいい。扉が閉まることで終わるラスト。アナーキストどころではなくそもそも犯罪行為自体の純粋性を追求するマブゼの理屈が『殺人狂時代』の溝呂木省吾(天本英世)とまったく同じで興奮した。

本作の公開中止後、ドイツ映画人を招集し、偉大な芸術映画としてゲッペルスが称揚した映画
『戦艦ポチョムキン』
『アンナ・カレーニナ』
『反逆者』
『ニーベルンゲン』
ヒッチコックの『海外特派員』は最悪らしい。
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