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四つの恋の物語の3104のレビュー・感想・評価

四つの恋の物語(1965年製作の映画)
3.5
源氏鶏太の『家庭の事情』を原作としたホームコメディ。
同じ原作で大映が1962年に同じ『家庭の事情』のタイトルで映画化している。先にそれを観たのもあり、どうしてもそちらとの比較になってしまう。よってここでも大映版との差異を中心に書いていきたいと思う(興味がある方はそちらのレビューを先にお読みいただけると幸いだ→https://filmarks.com/detail/26002/22845951)。

妻亡きあと、男手ひとつで4人の娘を育てた父が定年退職に際し「退職慰労金」250万円を家族5人で分配する導入部は大映版と同じ。しかしこの日活版ではその50万円の使い道があまり物語に活きてこない。次女が男にまるごと貢ぐくだりもあるが「全額を渡した」という悲愴感もあまり感じられず。

その代りといえるかどうかはわからぬが、この日活版では4姉妹間の活発な~ときに仲良く、ときに喧嘩口調の~やり取りが頻繁に描かれる。ちなみに大映版では上から若尾文子/叶順子/三条魔子/渋沢詩子だった姉妹。ここでは芦川いづみ/十朱幸代/吉永小百合/和泉雅子がキャスティングされている。
そして大映版ではほぼ平等に4人の恋模様が描かれていたが、日活版では明らかに三女の吉永小百合に偏重している。吉永>和泉>>十朱>>芦川といった分量か。会社がその時点で推しているのは誰であるかが窺えるが、個人的には現代っ娘の四女・和泉雅子の美貌のほうがより心に残ったのは事実(芦川いづみ嬢は別格です。物理的な美貌のピークは過ぎているがそれでも清楚で美しい。ガタイのいい他の姉妹に比べて華奢な体躯がとにかく映える)。

物語は四姉妹のそして彼女達の父の様子を柱として進むが、大映版では各人ともきっちりと描かれた恋の行方が、人によっては曖昧なまま終わったり、そもそも恋の相手が登場しなかったりもする。大映版とさほど上映時間は変わらないのに、である。「四つの恋の物語」と銘打ちながらなんとも消化不良、看板に偽りありである。いわゆる「日活青春路線」のなんという事のない一作だが、それでもDVD化されてないのは残念に思う。

わずか2年ほどしか存在しなかった「船橋サーキット」が劇中に出てくるがこれは貴重かもしれない。競馬場のロケは右回りだし大井競馬場かな?
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