あかつか

五人の突撃隊のあかつかのレビュー・感想・評価

五人の突撃隊(1961年製作の映画)
4.5
昭和19年5月ビルマ最前線。インパール作戦。

「モグラじゃあるまいし!」

イーストウッドが見たとは思えんが、塹壕掘りのシーンから始まって、山村聰が地図を見ながら前線を偵察するシーン、歩兵たちがブツクサ言うシーン、兵隊たちの召集前のエピソード、悪化する状況…。『硫黄島からの手紙』を思い起こす。

前線。先はないとわかっていても、いざ「玉砕」と言われると身が凍る。

「人間、死にたくないと言ってなぜ悪いんです!」
「戦うのが祖国愛じゃないか!」

撤退する大隊。追撃を食い止めるために選抜された野上少尉(本郷功次郎)以下、4人の兵隊と動かない戦車。彼らの交流と召集前の回想に心打たれる。

本郷功次郎(職業軍人)
川口浩(軽口の前科者)
藤巻潤(画学生)
川崎敬三(初夜寸前で赤紙)
大辻司郎(オソマツ落語家)

タイトルバックで流れる最前線での衝突を見ると「国のために死ぬなんてバカバカしい!」と思うのに、山村聰扮する上官が出てくると「カッコいい!」と思ってしまう。

軍人としての誇りを胸に、クラゲ(軟弱者)指揮官といわれている父親に反発する本郷功次郎。刑務所で赤紙を受け取り、勘当同然で飛び出した川口浩。扱いが微妙なんだが会津弁?がとてもいい川崎敬三。画学生なのに腕が太すぎる藤巻潤。そして、大辻司郎は彼のベスト映画でなかろうか。五者五様の面白さ。

監督井上梅次。プログラムピクチャー全盛時にメガホンをふるい続け、Wikipediaによると、ピンク映画界を除くと監督した映画は最多らしい。

『銀座っ子物語』『閉店時間』みたいなアイドル映画かと思っていた。本郷功次郎と父との関係回復の描写が薄い気がしないでもないが、俳優の演技と人間ドラマに圧倒されっぱなしの2時間弱。

脇役も充実。田宮二郎、潮万太郎、安部徹、浜田ゆう子。『婚期』の蓮子ちゃん(弓恵子)が藤巻潤の妻やってて可愛かった。

背景に見えたビルマの寺院は合成だろうか。

あと、地道すぎる地雷除去。だがしかし作戦の成功は彼らにかかっている。
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