星一

お茶漬の味の星一のレビュー・感想・評価

お茶漬の味(1952年製作の映画)
4.5
 東京物語しか見たことなかったので、色々見てみたいと思い選んだこの作品。ある漫画の一コマにこの映画の最後のシーンが使われていたのを思い出してみてみました。

 田舎から出てきたある企業の部長を務めている仕事一筋と言ってもいいくらいの主人公と、お金持ち育ちの妻。育ちも性格も正反対と言ってもいい二人の夫婦生活はすれ違いを起こし、妻は主人公に黙って旅行に行ったりしていた。

 この二人、それぞれの生活の様が180度ガラッと違っていることが面白い。主人公は友達の弟とパチンコをしてはまってみたり、妻の方は旅行に行ったり、お見合いの付き添いで歌舞伎に勤しんだり。

 この二人のすれ違い様は、夫婦として合ってないのではないのだろうかと思わせてしまうが、ところどころにお互いを思い合っているシーンがある。

 この僅かな感情を見せてくるところがこの映画の面白いと思うところの一つだと思う。妻は夫のことをつまらない人間だと思っていても、どこか心の隅にあるような顔を見せる。

 主人公は素っ気ないような風を取りながらも、お互い気を遣わずに本当の夫婦になりたいと思っている。

 この二人はシーンの表にあまり出さないでいるだけで、しっかりと思い合っていて、そこにちゃんと愛があるように感じさせる。だからこその最後のお茶漬けのシーンで、それこそがお茶漬けの味なんだと思う。

 シンプルな夫婦の愛のストーリーで、東京物語よりも感情を感じさせて、みやすいようにも感じた。アマプラで見たんですが音声が荒く、少し聞きづらいところもあるが、映画が好きな人なら是非見る価値はあると思います。

 こういう生活を感じさせつつ、それぞれのキャラクターの感情を垣間見せてくれる映画はやっぱり大好きですね。
星一

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