工藤蘭丸

エルビス・オン・ツアーの工藤蘭丸のレビュー・感想・評価

エルビス・オン・ツアー(1972年製作の映画)
3.4
前作の『エルビス・オン・ステージ』から2年後。15日間で15の都市を巡るコンサートツアーの様子を中心として描いたドキュメンタリーですね。

今度は監督も代わって趣向を凝らした演出になっていて、スプリットスクリーンで複数のカットを同時に映したり、若い頃の映像や写真などを挿入したり、彼の原点であるゴスペルソングを歌っているところなどを見せたりもしていました。前作のようにカメラ目線でふざけるようなところもなく、比較的彼のシリアスな面を強調していて、ドキュメンタリー映画らしくはなっていたかも知れませんね。

だけど、肝心のエルヴィスの方が、前作の時より太ってカッコよさが薄れてきたし、衣装ばかりが豪華になるだけで、あまり魅力的とは思えなくなってしまった。私がリアルタイムで見ていた時のプレスリーのイメージも、こんな感じでしたね。

と言っても当時はミュージックビデオなどがあるわけでもなかったし、プレスリーの実際の映像を見る機会というのはほとんどなかったけど、本作が公開されてまもなく、ハワイでのコンサートの模様が、史上初めてテレビで世界同時生中継され、それは大いに話題になったものでした。

その時は私は中学生で、家族と一緒に、神社の境内で正月飾りを焼くどんと祭に行っていて観られなかったんだけど、その帰り道に電器店のテレビから流れていた映像を、しばし立ち止まって観ていた覚えがあります。なので、それが1月14日だったという日付は忘れられません。史上初と言っても、その後もこれだけの規模のコンサートが世界同時生中継された例というのはなかったと思うし、まさに空前絶後のイベントで、やはりそれだけの大スターだったんでしょうね。

それから、本作でも『ラヴ・ミー・テンダー』を歌いながら女性ファンにキスをしまくるのは同じだったようだけど、その間に彼の出演映画のキスシーンばかりを繋ぎ合わせた映像も流されて、ひょっとしたら『ニュー・シネマ・パラダイス』のアイディアは、ここから生まれたのかも知れないと思ってしまいました。