のわ

ウェディング・ベルを鳴らせ!ののわのレビュー・感想・評価

2.7
【 クストリッツァの祈り、または彼への祈り。】

単純に楽しめる。幸せがそこに訪れるから。
でも、それを満喫できない自分がいる。
それは何故か。  
『アンダーグラウンド』という傑作を知っているから。  

当時、賞賛と同時に起きた非難の嵐の中 クストリッツァは映画をもう撮らないとさえ言った。 そんな彼の作品が今でも観られるという事は有り難く思いたい。
だが、闘う事を辞め、祈る事にした彼の作品は どこまでも心地よい夢を見た気分で終わる。

映画をどう捉えるか、だと思う。
夢のような映画を楽しみ、胸を躍らせて日々へ帰る活力とするのか。 切実な映画を観賞し、世界へのメッセージを真摯に受け止め日々へと繋ぐのか。  
だから本作のような作風を批判などしない。
十分に素晴らしい作品だと思う。
でもやはり僕は彼がまた本気で世界を描く事を待ち望んでいる。  

本作が、ただの娯楽だとは言わない。 随所随所にシニカルな批判は満ちている。 だが、そういう小物を観れば観るほどに、 まだアナタは世界に訴えたいのではないですか、と聞きたくなる。真っ向からぶつかるに足る信頼を世界は持ち併せていない 彼の中のこの現実が僕には実に悲しく響く。    

もう1度、せめて後もう1度で良いから、彼が本気で全てを注いだ映画がこの世に生まれますように。  

僕はその誕生の日が来る事を
ひたすらに願い、祈りたい。
 
 
のわ

のわ