一人旅

ウェディング・ベルを鳴らせ!の一人旅のレビュー・感想・評価

4.0
エミール・クストリッツァ監督作。

旧ユーゴスラビア出身の鬼才エミール・クストリッツァ監督が2007年に脚本と演出を手掛けた喜劇映画で、お嫁さん探しに奔走する少年の姿を狂騒的に描きます。

セルビアの山奥で祖父と暮らしている少年ツァーネが、死期を悟った祖父の願いを叶えるため、田舎から都会に出てお嫁さん探しに奔走していく様子を描いたクストリッツァお得意の狂騒喜劇となっています。

純朴な田舎者少年と街角で偶然出逢い一目惚れした年上の美人ヒロイン:ヤスナとの風変わりな恋のゆくえを、二人を取り巻く過激な個性を持った面々との狂騒的日常の中に活写した群像喜劇となっていて、ヤスナを売春宿に売り飛ばそうとする悪党との熾烈な攻防や、銃の扱いに手慣れた祖父の友人の孫たちとの騒動、故郷に残った祖父と独身美熟女の熟年恋慕のゆくえ等を織り交ぜながら、わりと粘着質にヤスナにアプローチし続ける一途な少年の懸命な恋の奮闘をコミカルに描いていきます。

クストリッツァ作品の大切なモチーフである多彩な動物たちが画面を賑やかに彩っていますし、例に漏れずリズミカルで騒々しい音楽も物語を大いに盛り上げています。全編にわたっていつものクストリッツァ節が炸裂した狂騒喜劇で、人々が無秩序に躍動するお祭り騒ぎな情景の中に、男女の純粋な愛情を幸福感たっぷりに謳い上げた完全無欠の人間賛歌であります。
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