ななみん

ダンサー・イン・ザ・ダークのななみんのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

母・姉からずっとオススメされていましたが、簡単なあらすじを聞いただけで胸糞で…ずっと観るのを躊躇っていました…。でも、やっと。ついに?鑑賞しました。

直球な感想は…「悲しい。」の一言に尽きます。とにかく私は悲しかったです。
終始、ずっと言葉が出ず、眉間にしわを寄せるか、眉毛が下がり口角も下がりっぱなし。一瞬たりとも気分が上がる瞬間はありません。永遠に悲しい。

ここからはネタバレになります。

「クラスで僕だけが自転車を持っていない。」と言う息子ジーンに、友人夫婦が「お母さんからだよ」と嘘を言ってプレゼントしてくれた。
母セルマは、「やめてちょうだい」「贅沢させられない」「誕生日も何も買ってあげられる余裕が無いのに」と言い、その優しさを認められなかったものの、自転車を乗って喜んでる息子の姿を見て、「嬉しそうだわ…」とニコニコになるセルマ。すんなり自転車を持たせることを受け入れた。

誕生日にも何も買ってあげられない、余裕が無い、口癖のようにいつもそう言うけれど、実は母セルマは誰にも言わず、隠れて沢山沢山貯金をしていた。それは、息子ジーンの為。

セルマはじきに盲目になってしまう病気で、息子ジーンにも遺伝で引き継がれてしまうということで、手術をさせるために貯金をしていた。
ただ、手術をしなければいけないと伝えてしまうと、恐怖で目を気にしてしまう。そうなると手術も上手くいかない。だから、貯金をしている事、手術をさせる事は息子には絶対に隠していたかった。
自分が盲目になるまでに時間が無い。
盲目になってしまうと働けない。お金が入らない。
子供は13歳から手術が出来る。元々チェコに住んでいた2人がアメリカに越してきたのも、優秀な先生の元で手術を受けさせる為。
お金を稼げる今の内に、昼勤、そして夜勤までして、自分に出来る事を一生懸命してお金を貯めます。

しかし… 母セルマは日に日に目が見えなくなってきてしまい、仕事にも影響が出て怒られることが増えてきた。それでも、大好きなミュージカル、演技が自分を元気にしてくれていた。
全てセルマの空想ですが、セルマはいつだって歌って踊っていた。それを幸せに感じていた。

ある日のこと、どん底のスタートです。
目が見えなくなってきている事をいい事に、仲良くしていた友人夫婦の夫に裏切られ、貯金を全て盗まれる。

誰が盗んだかはすぐに分かった。その夫婦の家へ金を返してもらうためだけに尋ねる。
何でこんな事をするの?ジーンの手術までに時間が無いの。お願いだから返して。と泣きながら訴えるも、「じゃあ俺を殺せ」と全ての罪を被せるために銃をセルマに持たせ、目が見えない事をいい事に自分を撃たせた。もちろん心の優しい優しいセルマ本人は撃つ気も殺す気もなかった……。

そこから強盗、殺人の罪で捕まり、裁判で死刑が下される…。

セルマの親友キャシーは、毎度面会へ来てくれます。
「手術費用(貯金)は取り戻せた。それを弁護士費用に回そう」
「駄目よ。絶対に手術をさせて」
「あの子には母親が必要よ!!!」
「目が大切なの!!!」と号泣しながら言い争う

キャシーは、息子ジーンのためにも、無罪を主張して息子の元へ戻ってきて欲しかった…
セルマは、自分のように盲目に苦しんで欲しくないと心から思っていた。息子が手術してくれるのなら、自分は死んでもいいと覚悟を決めていた。

結局、優秀な弁護士を雇う話は断り、死刑が決まった。

処刑台までの107歩。
処刑当日、足がくすんで歩けない…と牢獄の中で泣き崩れる。「私も同じく息子がいる母親よ」といつも優しくしてくれていた女性刑務官に、手を引かれるも立とうとしない。処刑台へ行く勇気が出ない。
「音を奏でてあげる。」と、ここからはセルマの妄想。ミュージカル調で107歩、1歩ずつ、踊りながら歌いながら処刑台へ向かっていく。こんなに暗い悲しいミュージカルは生まれて初めて見ました。

いざ処刑台にたどり着き、首に縄を通されるものの、怖くて脅え、泣き崩れて倒れ込む。それじゃあ執行が進まないということで、刑務官達が強制的に立たせる板を持ってきて全身縛り付け無理矢理意図的に立たせる。 (暴れる者や、抵抗する者にはこんな事をするのだと初めて知りました…。怖かった。)

死刑実行を見届けに来ていた者の中に、親友キャシーも。「最後に!」とセルマの元へ行き、息子ジーンのメガネを渡した。「ジーンは外にいるわ!」と言った。
セルマは、ジーンは手術に成功し、もうメガネが必要なくなったと知り、ほっとした。
そして、安心して、歌をうたう。

セルマは元々言っていました。
「私は映画は最後まで見ない。最後から二番目の曲を聴いたら映画館を出る。そしたら自分の中で映画は終わらず続くの。」と。

自分が思う最後から二番目の曲を歌いました。歌いきる前に、途中で処刑が実行されました。

そこからは、一気に静けさとやりきれなさだけが残ります。受け取った息子ジーンのメガネも飛んでいきます。

「ジーンは外にいるわ!」処刑台には姿を見せなかった息子。
年齢制限で、又は、母親の処刑なんて見せるものでは無いという事なのかなと思っていましたが…
色んな方の感想を見ていて、もしかして実は手術していないのか?手術は失敗したのか? そんな風に思わされるようなアングルの撮り方などもあったようで… 考え方、捉え方は沢山あると思いますが、そう考えるとまた見直した時に、全然違う角度で、違う意味で涙してしまう…と思いました。


鬱映画、鬱、最悪、見なければよかった、後悔
という感想が多いですが…
私は全くそうは思いませんでした。
確かに悲しくて辛くて残酷で…。胸が痛いです。
でも、観たことを後悔する気持ちは1ミリもありません。むしろ見て良かったです。

ミュージカル映画はあまり見た事が無かったですが、気持ちよく歌って踊る、どんな状況であろうと楽しさが滲み出ている。こんな表現の仕方があるのだと…新しい発見?思い?
また新しい自分の中での映画鑑賞発見?が出来たような気持ちです。

母親が息子を思う気持ち、素敵でした。
私もいつか親になったら、そんな風に子供を1番に思える親になりたい。

「なんで自分の病気が産まれてくる子供に遺伝するものだと知ってて、ジーンを産んだ?」と聞かれ、「この手で赤ちゃんを抱いてみたかった」

無責任と思う人もいるかもしれませんが…私は感激しました。感動しました。私もきっと同じ立場なら産むと思います。そして同じように、手術をさせたいと思うでしょう…。


まだ小さい内に母親が居なくなったのはとても辛いと思うけど、心からジーンの幸せを願いました。 自分を1番に思ってくれていたこと、母の偉大さを大人になってから理解して、きっと嬉しく思うと思います。


見て良かったです!
ただ、1つ言ってもいいとするのならば……

もっと息子目線もあってよかったのではと思いました…。母と息子の絡み合いや、息子が母を思う気持ち、母が牢獄に入ってしまった時、死刑を下された時、処刑日にすぐ近くまで来ていた所や、目はどうなったのか…手術したのか…母の願いは報われたのか…

そしたらもっともっと別の展開が見えたのかな、感動があったのかな、鬱のまま終わらなかったのかな?など色々考えました。

でも、この映画はこれで良かったのでしょう。
凄く悲しかったし、胸が苦しかったし、もちろん号泣しました。でも、なぜか観たあと、心がスッとして、明るく生きようと思いました。 心が晴れていました。(おかしいのかなぁ…。
ななみん

ななみん