高橋早苗

ダンサー・イン・ザ・ダークの高橋早苗のレビュー・感想・評価

4.1
『これは 最後から2番目の歌
 私たちが そうさせない限り
 最後の歌には ならないの』

☆☆★


この眼が 遺伝により失明すると
知る母は

我が子も
同じ運命を辿ることを
全力で拒む


その為に 昼も夜も働き
子の手術代を貯める


ミュージカルが好きな彼女は
「最後の歌は 聞きたくないわ
 グランド・フィナーレ始まると もうガッカリ」と言う

彼女の“名案”
「最後から二番目の唄が 始まると
 映画館を出るの
 そうすれば永遠に 映画は終わらない」


最後から2番目の歌で
いつも終わる 彼女の夢

唯一望み続けた 息子の生に射す光を
観ることなく終わる
希望だけを 手にしたまま


★★☆


私たちの人生の時間

フィナーレの合図が一体いつなのか
分からない私たちは
いつでも“最後から2番目の歌”を
歌うようなもの


終わりを意識したからこそ
輝くのか

いつ終わるかも分からないから
今ここで 輝き続けるのか


…選ぶのはあなた次第、と
強烈に問うてくる映画だ。
確かに、公開当時
映画館で観た時は、2〜3日落ちた。
こんな映画あるんかと。ここまでしなくったっていいじゃん、位に感じた。


今は違う。
“最後から2番目の歌”しか歌えないのが私たちだと気づいたら
全く違う景色が観えた。



彼女を
不器用だと言う人がいる
バカだと言う人もいる
周囲の助けをなぜ借りないのかと
言う人もいる


器用に
利口に
助けに甘んじたら
確かに、全く違う結末になったのだろう


だけど
彼女の中には
そんな選択肢すら なかった

彼女の 見えない眼が
観ていたのは
『この手に抱きたかった』赤ん坊の命に
光を差すこと
それだけ。


セルマが歌う『I've seen it all』の通りに
“正直にいうと 本当に興味がないの”


フィナーレにガッカリする彼女は
“最後から2番目の歌”にしか
意味を見出さなかったのだろう


…時を経て、こんな受け取り方ができるなんて。
だから映画は面白い。


☆☆★


『これは 最後から2番目の歌
 私たちが そうさせない限り
 最後の歌には ならないの』
高橋早苗

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