Kyoshiro

ダンサー・イン・ザ・ダークのKyoshiroのレビュー・感想・評価

5.0
ダンサー・イン・ザ・ダーク

どんな映画やドラマでもたちまち泣いてしまう自分がこれでもかというくらいに泣いたであろう作品。

まずは、映像はわざとなのか古いからなのかB級だったりホームビデオ的にみえるが、そこが感受性を高めてくれる。
この映画はストーリー性とかよりも、人物の情景や歌(歌声)、何を伝えんとしているかを考えながら観てほしい。
どんなに親切で心優しく見える人でも、必ず裏もあれば裏切られることもある。内面を見ているつもりでもそれはその人のたかが一部である。
どれだけ幸せを願ってもどれだけ努力をしても全くこれっぽっちも報われない事もある。そんな中でも幸せを見出すことはとても難しいが、息子に対する愛(これまた美しい)や希望で生きている彼女に心の底から同情をし、これ程映画の人物に幸せになって欲しいと願ったことは今まであっただろうか。

ミュージカル映画というものは華やかな印象であったり、辛くても凛として最終的には幸せに終わりハッピーに歌ったり、これから頑張ろう。と思える作品が多いであろう。
だがこの作品は(主人公は)苦しいくらいに不運不幸に見舞われて希望さえ見出すのが難しい状況の中でさえも夢や希望を捨てずに一生懸命働いて現実逃避から歌を歌う。
この姿に心を打たれない人間は居ないであろう。

アイスランドの歌姫であるビョークの歌声もこれまたぴったりである。
彼女の歌声は儚くも美しく、少しでも触れたら崩れてしまいそうだがその中にもブレない強さがある。彼女ほどセルマが似合う女性は居ないであろう。

工場に鳴り響く機械の音や自然の音、視力が弱いセルマからは自分達が体験したことのないような素晴らしい音色が聴こえているのだろう、とここまで考えさせられる。

この映画を観るときは相当な心構えを持って観て欲しい。
そして何を伝えようとしているのかをじっくりと自分なりに考えて欲しい。
自分の状況下に置いて共感してみるのも良ければ、ここから現実的に自分を捉えてみるのもよし。
楽しいだけが人生じゃない。なんならこの世は幸せを見出すことが難しい人生である。

だが幸せとは人それぞれの概念であって、どう自分なりに幸せを見出せるか。

ここまで深く考えさせられる映画は中々無い。

若干21歳の自分だが、(観たときは18〜19歳の頃)この映画に出会えて人生に新たな視点を加えてくれたこの映画は是非とも一度は観てほしい。

自分はバイト前に観て過去一で嗚咽するほど泣いて(自分の涙腺が逸脱して脆いのもあるが)バイトに大きく影響を与えてしまったので要注意。
Kyoshiro

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