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香港パラダイスのHKのレビュー・感想・評価

香港パラダイス(1990年製作の映画)
3.8
『噛みつきたい』『卒業旅行にっぽんから来ました』などの金子修介監督による日本映画。香港が舞台。キャストは斉藤由貴、小林薫、YASUKOなどなど

パリに憧れるツアーコンダクターが、思いもよらず香港に出向を命じられる。そこでは香港の秘宝が盗まれるという事態が発生しており、その秘宝盗難の犯人がツアーに紛れていた。彼女はその事件に巻き込まれ、次第に宝を追う男と仲を深めていくのだが…

見る前は不安に思っていましたが、見てみるととても面白かった。金子監督による40年代のノワールシネマのリスペクト、アルフレッドヒッチコックのリスペクトともいえるオマージュがふんだんに利用されている。

序盤の世界地図の映像と物が盗まれたというイメージをそのままぶち込むだけで物が盗まれたということを映像的に簡潔に示すという映像表現は、それこそロバート・アルドリッチ的な省略にも感じられる。本当に無駄がない。

そして、映像的にも面白い箇所のみで物語を構成しようとする試みがこの映画ではよく感じられる。初めはすごい重要そうなキャラクターが、序盤の終わりでまさかの死亡。これこそまさにヒッチコック的。そこからの彼女の逃走劇、何も事件の全容を把握することなく巻き込まれてしまうというのもヒッチコック的で素晴らしいと思った。

必要性のないオーバーな演技は鼻につくのだが、この映画内だとそういう驚かせのみで構成されるため、そこまで鼻につかない。寧ろ清々しくコメディに吹っ切れていてとても良い。催眠術を受けるときの香港の見世物ショーが笑えた。

あそこで、まさかの展開とかえ~!とか言えるような突拍子のないギミックや展開を畳みかけるようにぶち込むスタイルがとても良いと思いましたよ。すごい楽しんで金子監督作っているというのがよく分かる作品でしたね。

一番のハイライトはやはり、斉藤由貴が天本英世の催眠術師にまんまと催眠術をかけられ、ジェイソンが憑依してチェーンソーもって暴れまわるシーン。いやまあ正確には悪魔のいけにえなんだけど、あそこの暴れっぷりもとても良かったと思いますよ。

あそこで警察もマフィアもひっちゃかめっちゃかでヘリまで出てくる始末が笑える。最終的に電柱が倒れる。

阿藤快演じる警察の人も良かった。やっぱり怖そうだったし。それでも剽軽で畝。

個人的にはドラム缶に入れられた後に流れるように色んな所に行ってしまうという映像的なダイナミックな面白さもよく効いていたと思う。あそこは本当に笑った。

最後にはお約束ともいえる吊り橋。あそこも古典的ながらも色んな映画のお約束をふんだんに取り入れているために、安心して見れた。

いずれにしても見れて良かったと思います。ジャパニーズヒッチコック映画として見ても可笑しくはない気がする。
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