半兵衛

ブラック・エースの半兵衛のレビュー・感想・評価

ブラック・エース(1971年製作の映画)
3.2
表向きはシカゴのギャングから大金を借りたにも関わらず返そうとしない田舎の食肉業者をボスの命令で取り立てにきたリー・マーヴィンが成敗するというアクション映画らしい内容なのだが、実際は舞台となるカンザスをマーヴィンが訪れて地元の人たちと交流したり人肉まで処理する食肉工場の現場や人身売買、広大な麦畑といった名所を散策するテレ東で放送している田舎バラエティーを一万倍くらい過激にしたようなカントリー映画であった。

肝心の貸したお金は最初から放置されて牛肉の処理やそこを経営するジーン・ハックマンとその弟の微笑ましい交流劇、更にはリー・マーヴィンとその部下のぶらり旅や人身売買で拾ったシシー・スペイセクとのふれあいと話がどんどん横道に逸れていくので変な気分になってくる。さすがにこれではまずいと思ったかのように合間合間にハードボイルドらしいアクションが展開されるが、農場のカントリーな雰囲気に飲み込まれたのか70年代らしい殺伐としたものではなくのんびりとした緩い独特なものに。

ラストはようやくお客さんの期待する大激戦が繰り広げられるが、ジーン・ハックマンへの対応やオチの付け方などやっぱり変。あとシカゴはそんなに安全な街ではないと思う。

ピンチに陥ったマーヴィンをたびたびサポートする名もなき部下たちがハードボイルドな雰囲気を出していて妙に印象に残る。

あと冒頭に登場するギャングのボス役で『フレンチ・コネクション』のポパイのモデルで役者としても映画に登場していた元刑事が出演しているのに驚かされるが、やはりハックマンから誘われたのだろうか。
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