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ブラック・エースのcatmanのレビュー・感想・評価

ブラック・エース(1971年製作の映画)
5.0
都会(シカゴ)の引退間際の腕利きギャングが、組織の依頼でド田舎(カンザス)でやりたい放題の悪党から借金を取立てるため現地へ乗り込む話し。リー・マーヴィン主演、ラロ・シフリン音楽のクライムサスペンスと聞いたらもう絶対に観るしかないヤツ。ダーティでエキセントリックな悪党は鉄板のジーン・ハックマン。

渋めのジャズファンクで幕開けするかと思いきや、冒頭で流れるのはシフリンお得意のメロウテイストが炸裂する流麗なラウンジミュージック。なのに映像は食肉加工工場で人肉ソーセージがシステマチックに生産される過程をじっくり見せると言う、かなり変態的なオープニング。あらイイですね!他にも、ハックマンとその知恵遅れ気味の粗野な弟による兄弟喧嘩と言うかオッサンどうしのじゃれ合いをさしたる意味もなく延々と見せられるヤツとか、広大な麦畑で大型コンバインが車をバリバリ粉砕する様子をしつこく見せるシーンとか、閉鎖的な田舎社会の田吾作たちをフリーキーに見せるホラー演出とか、所々挿入される偏執的なセンスが強烈な異彩を放つ。エログロ要素もしっかり盛り込みながら、それらは間接的にしか見せないのもイイ。出て来るヤツが全員イカレポンチ!

リー・マーヴィンは流石で、彼の激シブな存在感が支離滅裂になりそうな本作をグッと引き締める。これが映画デビューとなる若きシシー・スペイセクの何処か浮世離れした透明感も本作の特異性を際立たせる要素のひとつ。脚本は杜撰だしアクションシークエンスの演出も凡庸ながら、風変わりな魅力に溢れたその筋の好きものにとってはオツな逸品。
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