たかちゃん

エノケンの孫悟空 前編のたかちゃんのレビュー・感想・評価

エノケンの孫悟空 前編(1940年製作の映画)
2.0
エノケン=ヤマカジのなかでは何とか観るに耐え得る出来。エピソードが団子で、どのシーンのセットも衣裳も類型的なので飽きてくる。キャストは大人向けなのに、体裁は児童映画。『西遊記』なのに、悟空の師を守護する心理が薄弱で、猪八戒、沙悟浄の個性、得意技が描き足りない。中川信夫の『とび助冒険旅行』はエノケンを活かし切っていたし、奥行きのある世界観の児童映画であった。その脚本がヤマカジなのだが、中川信夫は自身の世界に引き込んだ傑作としている。とび助は石で殴られたときに死んでしまった、と考えれば死後の世界の旅と理解できる。中川の持つ毒気が生きている。しかし山本嘉次郎は『西遊記』の毒気を削ぎ落してしまった。それが児童映画の作り方だと勘違いしたのだろうか。子供は怪談、ホラーが大好き。小生も『東海道四谷怪談』を小学生の時に一人で観に行っている。未見の59年版『孫悟空』が心配だ。
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