カズナリマン

処刑ライダーのカズナリマンのレビュー・感想・評価

処刑ライダー(1986年製作の映画)
4.2
B級映画とは、早い!安い!うまい!が売りのファストフード的エンターテイメントみたいなもんです。そればっかり食べる人もいれば、しばらく食べないと無性に食べたくなる人もいて、疲れた夜に「あーこんな日は難しいこと考えずにてっとり早く安心できるうまさが欲しい!」と手を伸ばしてしまう時もある。
そんな約束だらけのお手軽エンターテイメントのB級映画ですが、ごくたまに、後世に残っちゃうような、みんなにそのうまさを伝えたくなるような、奇跡の味がまぎれこんできます。

その一本がこちら、「処刑ライダー」。

まずはそのB級すぎるストーリーをご紹介。
…アリゾナ砂漠の中のブルックスという小さな町で、ある日、不良一味の残忍な手口によって1人の青年、ジェイミーが殺された。彼の恋人のケリー(シェリリン・フェン)をものにしようとした街のギャング団のリーダー、パッカードの仕業だった。
しばらくして、漆黒の車を運転する謎の男が街に現われる。黒いフルフェイスの男はパッカード一味に次々カー・レースを挑み、血祭りにあげていく。
時を同じくして、バイクにのったジェイクが街にやってくる。ジェイミーの元カノ、ケリーと仲良くなるジェイクを目の敵にするパッカードだったが、その前にあのフルフェイスの男が現われる。
果たしてジェイクとフルフェイスの男の関係とは??

みなさん、深く考えてはいけません。それはつまり…そういうことです。
さて、この「処刑ライダー」ですが、どこをどう切り取っても早い!安い!うまい!魅力にあふれています。

◯わかりやすく派手だが、高級過ぎないカーアクション!
…B級のアクションとは、マイケルベイのように終始大爆発が増幅していくようなモノではありません。少ない火薬を映画の一番いいシーンに集中させる、一点集中型がベスト。処刑ライダーの見所は、漆黒の車とギャング団とのカーレース。これが地味にかっこいいんです!!アクションを求めて処刑ライダーに手を出したファストエンターテイメント好きは大満足でしょう。高カロリーの過剰摂取なんか気になりません!

◯カワイく、グラマーかつ、やや尻軽なヒロイン!
観客は手っ取り早いエンターテイメント求めてB級映画を見にいきます。そしてBの精神は、「ポスターやチラシで約束したものは必ず出す!」こと。チラシの後ろにグラマーな女子がいれば、その女子はその体をキチンとつかって、観客を楽しませなければいけません。そしてその女子が「人生で一番旬であること!」こそが奇跡のB級映画のマスト条件。ターミネーターのリンダハミルトンがそう。ニアダークのジェニーライトがそう。ヘルレイザーのアシュリーローレンスがそう。もう一度いいますが、B級映画はファストフード。30分たったらゴミ箱行きの賞味期限です。なのでヒロインの旬具合は、観客のほっぺた落ち具合に直結します。本作のヒロイン、シェリリンフェンはご存知、ツインピークスで大ブレイクを果たしながら、その後トゥームーンなどを経て地味に姿を消していった女優。彼女の旬はツインピークスであらず、処刑ライダーです!

◯憎らしい敵!
かつて椎名誠が「映画館のスクリーンと女のケツはでかいほうがいい」と言ってましたが、そんな椎名氏なら合意してくれるに違いない。「B級映画の敵役は外道であればあるほどイイ!」。
「処刑ライダー」の敵役、パッカードは、イケメンでいやらしくて、最低な野郎!!自分が殺したジェイミーの弟を未だにいたぶるような、火傷の後に塩をすりこむのを楽しむような、そんな外道なんです!それはまさにバーガーキングのメニューでいうところの、アングリーバーガー(激辛)!そんな外道が処刑ライダーと対峙し、ギットンギットンにされるクライマックスには、アングリーバーガーを制し、口の中に残った絡みをジンジャーエールで抹殺しながら店をでるような、そんな清々しささえ待っています。

◯盛り上がる音楽!
B級映画音楽の心得①とは?「パクリだろうとなんだろうと手段は問わん。もりあげろ!」です。
とはいえ、奇跡のB級映画の数々にはきちんとオリジナリティ溢れる素晴らしいサントラがあります。ヒドゥンやマッドマックス2がイイ例です。
処刑ライダーのサントラの良さは、実はアクションを盛り上げる「インスト」ではなく、ドラマをもりあげる主題歌、挿入歌です。これは80sに流行ったパターンですが、ラブシーンにはいい歌を、映画の終わりにはカッケー主題歌を。これをきっちり守り、メリハリをもって映画のムードをリードした処刑ライダーのサントラは、まさにB級スコア奇跡の1枚。曲を聴くたび、あの世界にもどりたくなります。

そんなこんなでベタ誉めしてきた処刑ライダーですが、これが本当に心に残る奇跡のB級映画になったのは、さらなる理由があります。それは特にB級映画には求められていないクオリティなのですが、「面白いものを作ろう!!」という監督、脚本、スタッフのあまりある想いがおそらく地獄から召喚してしまったのでしょう。とにかく、以下のポイントがあるからこそ、自分は「タイタニック」よりも「トランスフォーマー」よりも「ハリーポッター」よりも、処刑ライダー推しなのです。

●ケリーがローラースケートを履いて働くバーガー屋。青春時代の憧れナンバー1!!
●若者が集う街の河ビーチ。なんじゃそれ!でもアメリカの内陸の小さな街はそんなところしかいくとこねーんだ!スゲー!
●徹底的に強い処刑ライダー。あんたが誰だかしれねーが、カッコイイ!
●ジェイミーの弟が、最後ジェイクと話す会話…なんでこんなに感動的なもんぶっこんできたんだ!B級映画にこんな複雑な涙いる??泣ける!
●最後の顛末…これは…ええ?ああいうこと??なんて単純に見えて単純じゃねーんだ!イイ!

あ、いい忘れましたが、主人公ジェイクはチャーリーシーンです。
決して素晴らしい演技をしているわけではありませんが、彼にはぴったりの役。そして、今再び思う。「チャーリーシーン」ってなんて、代表作が多い役者なんだ!!
兄貴のエミリオエステベスといえば、ヤングガンズ(あ、こちらも傑作B級)くらいなのに、チャーリーと来たらプラトーンにウォール街、メジャーリーグにホットショットに処刑ライダー。
私生活??そんなんカンケーねえ!チャーリーよ、あんたの映画、最高にHOTっす!

最後にもう一度いいます!処刑ライダーの主題歌、ええわー。Viva 80s!