一人旅

ラ・ファミリアの一人旅のレビュー・感想・評価

ラ・ファミリア(1987年製作の映画)
4.0
エットーレ・スコラ監督作。

ナポリの美しい情景の中に老境の男たちの友情を描いた『マカロニ』(1985)で知られるイタリアの名匠エットーレ・スコラ監督による家族ドラマの名篇で、ローマに暮らすとある上流家庭の長年にわたる歴史を回想形式で紐解いていきます。

1906年から1986年に至るまでの80年間にわたる一つの家族の歩みを、ローマの高級住宅街にある家屋から撮影カメラが一歩も出ることなく映し出した“イタリア家族史+室内劇”で、一族の息子である主人公カルロの回想によって、現代イタリアの波乱の歴史とその中を生き抜いていく家族の歴史を並行的に紐解いていきます。

何十年経過しようとも変わらない建物の永続性と、その中で世代を交代させながら連綿と生きる家族との対比に中に、“家族”という生来の結びつきの尊さ、美しさをノスタルジックな空気感覚の中に普遍的に描き出したスコラ監督の職人技が光るイタリア家族日誌で、ゆったりとしたカメラワーク&絶妙な画角で映し出される家屋の内観が静謐な映像美を体現していますし、ヴィットリオ・ガスマン、ファニー・アルダン、ステファニア・サンドレッリ、オッタヴィア・ピッコロ、フィリップ・ノワレら伊仏の名優の競演も見所となっています。
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