お豆さん

ラ・ファミリアのお豆さんのレビュー・感想・評価

ラ・ファミリア(1987年製作の映画)
3.5
男の一生であると共に、彼の人生を見守った家の物語、という感じがするくらい、「家」の存在が際立っている。イタリアも30年前くらいまでは、祖父母、両親、叔父叔母、子ども、孫、ありとあらゆる親族が、あんな感じでひとつ屋根の下で一緒に住んでいたのだろう。その屋根の下で年老いた者が人生を終え、恋が生まれ、そして新しい生命が誕生する、そういうサイクルが繰り返されていく様子が丁寧に描かれる。カメラは室内から外へ出ることはなく、居間やキッチンや廊下をゆっくりと移動し、我々はあたかも家族の一員であるかのように、喜びも、悲しみも、裏切りも、あらゆる出来事に参加することになる。とてもシンプルな作りの映画だが、やはり人の一生というのはエピソードに満ち溢れていて、そのひとつひとつが愛おしいものだということを思い出させてくれる。家族は大事にしないとね。

80年に渡る人生の物語だから、子どもの遊び方の変化とか、女性のモードの変遷を見るのも楽しい。また、女性が結婚し出産したことにより学業を中断せざるを得なかった(イタリアの大学制度は日本のそれとは違い、そう簡単に卒業させてはくれない)というような時代背景なども語られていて、イタリア社会の実情というものも垣間見ることができる。お嫁に行かず、喧嘩ばかりしては仲直りを続ける3人のおばたちの存在が、物語にアクセントを加えている。変化するものがあれば、変わらないものもある。

2016. 40
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