美人なんだけど、「暗さ」を感じさせる女優、ドヌーヴが真にハマっている。正直、ドヌーヴ一本で見せきる映画と言ってもいいと思う。
瞳のアップから始まる冒頭から、目線の定まらないキャロルは既に「オカシイ」のは重要。男性恐怖症の理由は示されず（仄めかされるが明確ではない）、エスカレートする狂気をみる作品。
途中から幻想と現実が入り混じってくるため、キャロル主観の場面は必然的に「どっちかわからない」となる。となると、キャロルが殺人を犯すシーンも含めて「映像のどこまでが現実か」という注意は必要だろう。第三者だけでも「男はクズ」描写はあるが、殺された男には一定のエクスキューズはある。
不安を煽る手持ちカメラやアップの多用は閉塞感があり、上映時間より長く感じる。壁のヒビ割れや「手」など、心情を表す演出なのは理解できるものの、ちょっと陳腐。モノクロの質感とドヌーヴでなんとか誤魔化した感じ。ただ、そのギミックも含めて後世への影響は大きい。
さて、図らずしも、性の搾取という今っぽい側面もあるが、それを撮ったのがポランスキーというのも、なんとも興味深い。
