湯っ子

反撥の湯っ子のレビュー・感想・評価

反撥(1964年製作の映画)
4.0
ヒロインの視点で描かれているからか、出てくる男たちがみんな気持ち悪くて、病みが進んでいく彼女の気持ちがすごく迫ってきた。おそろしいことに、彼女の見ている世界には私にもおぼえがあって、自分だってたまたまこうならなかっただけなのかもと思えてしまう。

wikiには出てないけど、ポランスキーももしかしたらこんな世界を生きていたのかもしれないと思った。今でこそ、こうした症状を持つ患者に見える世界というのが、私たちの知識にもあるけれど、この当時には全く一般的ではなかったのでは。または、身近にこのような世界にいる人を知っていたのか、取材を綿密にしたのか。

そして、ポランスキーの犯した児童への性暴力についても考えずにいられない。
性的なトラウマなのか妄想なのかに取り憑かれた女性を、これだけ克明に描くことと、自分自身が本作の中で描かれているような醜悪な男そのものであること。
本作のヒロイン・キャロルも、大家のクソ男も、ポランスキーの中には共存しているのかもしれない。

人間が社会で生きていく上で、よく「一貫性」を求められる。行動や考え方などに。
でも、人間にはそもそも一貫性なんてものはなくて矛盾だらけ。だからこそ秩序を保つために一貫性が求められるのだろう。だけど、芸術の分野ではそのあたりは曖昧で、だからこそ芸術なのだと思う。芸術は、秩序とか建前からは自由であるべきだと思う。とか言いつつ、道徳的に受け入れられない!とか、○○蔑視がヤダ!とかよく言っちゃうけど私。
作品と作者は切り離しては考えられないけれども、作品の評価と作者の人となりに対しての評価は切り離すべきですよね。本作はやはり凄い映画だと思います。
湯っ子

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