デニロ

愛の讃歌 エディット・ピアフの生涯のデニロのレビュー・感想・評価

3.5
大竹しのぶの『ピアフ』再再演を観た。若き日の路上の歌唄いから死に至るまでをダイナミックに描いている。

一幕目は若き日のピアフの成長譚。二幕目は成功したピアフの愛の物語と死。

よく知られているピアフの名曲を大竹しのぶが全身を震わせて歌い尽くす。あたしが歌うときは、 あたしを出すんだ。 全部まるごと、という台詞の様に。

シャルル・アズナブールとの別れのせりふ。周りの言うことを聞いていちゃだめ。自分を出しなさい、全部まるごと。そうすれば観客はあなたのほうを信じてくれる。というような事を言う。

愛の讃歌、水に流して。最後の場面はピアフその人が立っていた。

前から3列目の真ん中で観劇していたのでラストの水に流してを歌う大竹しのぶの表情がよく見えた。歌い終え神々しさに満ち溢れた光を浴びたピアフの表情。暗転した後のカーテンコールに入っても大竹しのぶの表情は和らがない。拍手に促されての二度目の登場でも表情は崩れていない。三度目の登場でようやく少しだけ、ほんの少し大竹しのぶの表情になった。少しだけ笑顔が出てきた。彼女にしか分らないエクスタシーを感じていたのか、それとも歌唱に不満があったのか。わたしは彼女の存在に圧倒されてへたり込んじゃいましたけど。最近、日本でもカーテンコールでbravoと賛辞をおくる観客がいるけれど、オペラならともかく日本人の演じる芝居では何か違うぞと思う。今回はそんな無粋な観客はいなかったし手荷物を持った人が多かったのかスタンディングオベーションも起こらなかった。何か賛辞の声を掛けたいな、と思う。どんな言葉がいいんだろうか。

本作は1974年10月に公開された作品。若き日のピアフが成功するまでの話。ピアフの歌が全篇に流れていて、サントラ盤を買ってしまったほどなので気に入っていたんだと思う。観た田舎の劇場は『チャップリンの殺人狂時代』と共に上映されていた。
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